TRPG自キャラSS

綾川令也

永い後日談のネクロニカ:ジェラート

 暗い底から意識が浮上する。


(わたしは何をしてたんだっけか…)


 ぼやける頭を振り、意識を完全に覚醒させる。長い間眠っていたのか記憶が抜け落ちているような気もする。

 いや、実際そうなのだろう。意識が落ちる前に自分が何をしていたのかすら分からないのだから。

 これはまずいかもしれない。


「確か…姉妹たちと目を覚ましたあとゾンビ共に襲われて、他のドールに助けられて………それから集落に行って…そうだ!遊園地に行った!!!」


 自分が何をしていたのか思い出せる限り古いところから口に出して順に整理していく。

 生まれつきなのか独り言がとにかく多い。これはわたしの悪い癖なのだが今回は助かったかもしれない。

 頭の中だけで整理するのと、耳から入ってきた情報を頭の中で整理するのとでは難易度と疲労度が大きく異なる。

 本当はどこかに書いて整理したいところだったが、生憎と書くための道具も場所もない。そもそもわたしは文字が分からない。


「それでわたし達は遊園地から集落に帰った後、それぞれの目指すところへと別れたんだっけか?」


 粗方思い出せた気もするので一旦記憶の整理は終了、欠片すら思い出せないものは放置。


 思い出した結果今わたしがするべきことは


「あぁっ!!!カラス!!!!!」


 ―――そう、先の戦闘でわたしの頭ごとどこかに飛ばされてしまったカラスの捜索だ。

 カラス、というのは一般的にカラスと呼ばれているあの黒い鳥で相違ない。遊園地での探索中に見つけて、そのまま懐いたので連れていたのだ。


 が………。


「あそこで頭に飛んでくるのかー…。」


 戦いの最中で相手の攻撃が頭に直撃して、そのままカラスもどこかに行ってしまった。おそらく逃げたのだろう。


「とまれ、うじうじしてるより動く方が楽だな。」


 元来考えることは苦手なのだ。


「地図はあの赤髪に貰ったし、なんとかなるんじゃないかな?」


 アネモネとかいう赤髪の男にもらった地図を広げながら次行く所を思案する。


「うん!この湖の方なんかは何かありそうだ!」


 行先を決めたら即行動。銀色の尾を揺らし、わたしは灰色の世界に駆け出すのだった。


 了

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