それはオスの脳みそが yes と判断したにすぎない

@yutacalifornia

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 とある雨の夜、とある男がイタリア料理店へ夕食を食べに出かけた。

その男が食事を終えて少し時間が経った頃、女性ウエイターが客の食べたパスタの皿を片づけるために彼のテーブルに近づいたとき、男は何気なしに左方向へ顔を向け、その女性ウエイターの顔に目をやった。

男は、すらっとした長身の女性だなあ、とまず感じ、次に、お団子にした髪型と彼女が皿を手に取る際目を伏せたときに見えたアイラインとまつ毛がなんとなく彼女の印象として残った。

そして、それとほぼ同時に(もしくはそれよりも速かったかもしれない)彼女が自分のことをどう感じたのか、もしくは、なにも感じていなかったとしても(おそらくなにも感じていなかっただろう、自分は特に女性が目を引くような容姿ではないし、なにより彼女はただ仕事をしていただけだ、自分のことなど意識して見ていたはずがない)、そんなことなど一切お構いなしに、彼女が自分にとって恋愛対象になるのかどうか、さらに、あえて下品な言い方をすれば、彼女とヤリたいかどうかの“yes,no”を即座に判断していたことに、食後のコーヒーを飲み終え席を立ち、会計中に千円札を2枚彼女とは別の女性店員に渡している最中に気づき、自分は何故そのようななことを考えるのかと落胆し、店の出入り口のドアを開けて外へ出た。

 

 外はまだ雨が降っていたが、幸い駐車場が店に隣接されていたため、わずかに髪の毛や洋服が濡れた程度で男は駐めておいた車の運転席へと乗り込むことができた。

男には夕食を食べること以外の用事はなかったため、車にエンジンをかけてすぐさま自宅へ向かって車を走らせた。

普段男は車内で音楽やラジオを流すこともあるが、その日の帰りの運転中はカーステレオの電源をオフにした。

自宅まで数十分と短い距離だから特に音楽やラジオの雑談は必要ないという理由もあるが、なんとなく外の雨の音を聞きながらのんびりと家路に着きたかったのだ。

運転中男は、今度また同じ店に行って次は違うパスタを頼んでみようかなあ、とぼんやりと考えた。

店の雰囲気や料理の味、店員の態度に満足していたからだ。

なんとなく近場の店に入っただけのわりにはいい店に当たり今日の夕食は上出来だったが、もしさっきの店の満足度が少々低かったとしたら、自分はあの女性ウエイター目当てに店へ通っていただろうか。

もう少し自分が若かったらそうしていたかもしれないが、今の自分にはそんなエネルギーはないし、彼女目当てに足しげく同じ店に通う自分の姿は想像できなかった。

強い結婚願望もなく独身生活に慣れてしまっている自分にとっては、恋愛というものが年々煩わしくなってしまっている。

そんなことを考えながら車を走らせていると、住宅地に抜ける細い道路に差しかかったのでそこを右折し、自宅の駐車場に到着した。

車を停車させると男は運転席のドアを開け、少々雨に濡れるがゆっくりと歩いて自宅のドアの前まで行き鍵を開けた。

男の帰宅を迎えてくれる人は誰もいないが、男はなんとも思わない。

男にとってはそれが普通なのだ。



 その日の22時、男はいつもどおり寝室へ向かう。

ベッドの上に敷かれた布団をめくりベッドに横たわる。

部屋の明かりを消し、ベッドの横に置かれたナイトテーブルの上のスタンドライトを点ける。

もう特にやるべきことはない。

自然と眠りに落ちるまで目を閉じ、あとは何度か寝返りを繰り返したりして、次の日の朝6時に目覚まし時計が鳴ったら起き上がるだけだ。

外の雨の音を聞き男は、明日の天気も雨なのだろうか、と少し考えたが、雨だろうが晴れだろうが大して自分には関係ないことだな、思い直す。

洗濯物は天気に関係なく室内で干しているし、車通勤室内仕事、朝起きて雨だったら(もしくは雨が降りそうな天気だったら)玄関に置いてある折りたたみ傘を鞄に入れてからアパートを出るだけのことだ。

台風や雪でも降れば多少困るが今はどちらの季節でもない。

ふと、あの女性ウエイターの名前はなんていうのだろうか、と思った。

男には、接客された店員の態度が良くても悪くても名前を見る癖がある。

何故そのようになったのかはわからないが、いつからかそのような習性がついていた。

しかし、今回はその名前を確認するためのネームプレートが彼女の胸元には付いていなかった。

見た目の雰囲気からおおよその年齢は見当がつくが名前まではわからない。

だから男は、眠りにつくまでの間、彼女にしっくりくる名前を探すことにした。

なんとなく始めたその作業は思いのほか楽しく、彼女に仮の名前をつけた後、今度は頭の中で彼女とデートすることにした。

想像上の彼女はとても楽しそうだ、全ては自分の思いどおりに想像は進む。

男は強く目を閉じる。

彼女の輪郭を強くイメージする。

頭の中の彼女も目を閉じる。


そこから想像は一気に飛躍する!


彼女の唇と自分の唇を近づける。

キスをする。舌を絡ます。それを何度も繰り返す。

次に服の上から身体を触る。

上から順番に服を脱がせる。

胸を揉む。

何度も舌を絡ませる。

男もズボンを下ろす。

彼女が男の陰部を触る。

ついにお互い裸になる。

何度も強く抱き合う。

男の上に被さった彼女が徐々に胸、腹、腰へと下りてきて男の陰部を舐める。

そして咥える。

お団子にした髪が上下に揺れる。

彼女は目をつむりながら丁寧に口を上下に動かす。

男は彼女の顔を凝視する。視線を彼女のアイラインとまつ毛に集中させる。

彼女は上下運動をやめない。

そのうち男に限界が訪れる。

彼女の性器に自分の性器を突っ込む。何度もピストンする。

突っ込む突っ込む突っ込む突っ込む。

激しい感覚が体を支配する。脳天がスパークする。

ぶっ放つ。

精液が炸裂する。


ざー、強い雨音と共に男は目を開く。

 

 目を開けた瞬間、男は先程行った行為のことを忘れている。

というか、終わった、としか感じていない。

男はもう一度目を閉じる。

今度はゆっくり目を閉じる。

眠りにつくまでの短い間、自分がもう一度あの女性ウエイターが勤めている店へと足を運ぶかどうかもう一度考えてみた。

そのとき彼女はいるだろうか。

もし彼女がいたとしても自分は何事もなかったかのように振る舞うだろう。

何故なら実際彼女とはなにもないのだから。

きっと彼女の本当の名前を尋ねることもない。

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