〇〇系彼女って可愛いと思いませんか?
愛妹魅唯
第1話 プロローグ
気づいたら知らない天井だった。
白いカーテンに囲まれたその部屋は、差し込んだ日差しによってポカポカと心地よい雰囲気に包まれた。
「………なんとか生きてたみたいだな」
そうポツリと呟くと、隣に座って本を読んでいた少女が口を開いた。
「あなた……もう大丈夫なの?」
「え?あ、雫来てたのか?」
「来てほしくなかったの?」
「いや、来てほしかったんだけどさ?看護師とかに止められなかったか?俺手術の後すぐに病室変えられただろ?」
「看護師さんは全員どこかへ出払っていたわ、それに……」
雫は俺にいつもと変わらない無で構築された表情で言った。
「私はあなたの彼女なのだから、来て当然なのよ、気を使う必要とかは全くないの」
「そ、そうなんだけどもさ……」
「あら?照れてるの?……目が覚めたそばから表情がコロコロ変わるなんて、ほんと飽きさせてくれないわね」
このまま俺を照れ殺すことができると睨んだのか、雫は、ベッドの上へと上がり、俺の上に跨った。
「ちょ!?どうしたお前!いつもはこんな……」
「私、言わないだけであなたのこととても愛しているのよ?あなたが他の女子と話していれば嫉妬もするし、些細なことがうれしくてあなたと別れた後でにやにやする……私はそんな女の子なの」
「そ、そうなのか……」
「えぇ、だから今回のことはとてもショックだったわ………」
今回……というとアレのことだろうか?
俺が入院する理由となった事件。
「女子高生をかばって軽トラックに跳ねられるなんて……あなたのお母さんから電話で聞いたときは心臓が止まるかと思ったんだから……」
「え、あっと………それはなんというか……その……」
良い言い訳が思いつかず、俺がしどろもどろしていると……。
「………ちゅっ」
「っ!?」
俺の唇に自分の唇を重ね、雫は、「んっ……んちゅ……」っと可愛らしい声を上げていた。
次第に雫の小さい舌が俺の唇を押しのけ、俺の舌と絡み合った。
「ん……ちぃうっ……」
「んんっ!!んむぅ!!」
俺が不意打ちに面食らっているのを雫は悟ったようで、ジトーッと俺の目を見つめた。
これはこいつが面白がっている時の仕草だ。
「ぷはっ……はぁ、はぁ……」
「はぁはぁ……雫!おまっ!何して……」
「ディープキスだけど……知らなかったのかしら?」
「それは知ってるけど!なんで急に?」
すると、雫は、さも当然と言いたげな顔でこう続けた。
「あなたの口はすぐ言い訳ばかりするから塞いだの」
「いや、イケメンかよ……」
とかなんとか言いつつ、とても満足そうな顔で(真顔ではあるんだが)口周りに付いた唾液を自身の舌でなめとった。
「うちの彼氏さんは、奥手で全然手を出してこないから私ががんばってるだけよ、ほんとはすごく恥ずかしいのだから」
「うっ!……」
「この間も、私とクリスマスを過ごしているっていうのに……」
「ごめん!次から頑張るから!俺今一応怪我人だからそれ以上はっ!!」
「ふふ、冗談よ……、また一緒に大学行くんでしょう?早く良くなってね」
そんな風に悪戯気に笑う彼女は、さながら妖精のようだった。
そして彼女は、最後に俺の頬にキスをすると、「また学校で」という言葉を残して病室を出て行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます