「日米長期金利差が開くと円安・縮まれば円高」論についてのエミン・ユルマズ氏(トルコ人)の解釈について ←大正解かも?
現在、1$≒155-160円台という歴史的な円安が続いています。
この理由なのですが、「よくわかりません」。ただしいつも言っている経験則があります。
ドル円レートはほぼ「日米長期国債の金利差」によってのみ決まる。たとえば日米の10年もの長期国債金利の差が開けば「円安」、逆に縮まれば「円高」
…という単純な理屈です。ほぼこれだけで決まり、現在も当てはまります。安倍政権時、ドル円レートはおよそ1$≒108±5円の狭いレンジで動いていました。
これに対し現在はバイデン政権の、ほぼ意図的な「インフレ上等」政策〜トリクルダウン効果を狙った、イエレン財務長官の持論でもある「高圧経済理論」そのままに高インフレ容認政策を採用。この結果としてFRB (Fed)は政策金利をあげざるを得なくなり、この結果として長期金利も上昇。しかもインフレに対する読み誤りから長期間、高インフレ高止まりのままとなり、現在に至るという感じです。
過去、米国10年モノ金利はだいたい2.5%〜3%くらいで推移していましたが、2019年は本編の「2019年9月のメジャーSQの恐怖」でも述べたようにトランプ政権の失策のせいで長期金利低下。その後の新コロ発生後は世界景気の破滅が予感され、結果として米国国債金利も(FRBによる超大規模買いオペなどで買われて)0%-2%未満まで低下したのですが、2022年以後、急激に上昇し現在でも4.5%くらいの高い水準のままです。この急激な上昇に対し、日本の10年もの国債はYCC操作によって極めて低く抑えられ、つい最近まで0.25%。日本でも発生した物価高+出口戦略により現在は0.75%前後を維持しつつ、最悪1%までの上昇は許容する…という政策のようですが、日米の金利差を見てみると、米国の上昇幅に比べて日本の上昇幅が非常に低い状態です。この結果は「日米の長短金利差が拡大する一方」なので、現在の「円安」は納得がいく…という事になります。経験則通りだからです。
しかし、実のところ「なぜ日米の長短金利差が拡大すると円安になるのか?」もしくは「縮まれば円高になるのか?」のメカニズムについて納得のいく説明を聞いたことがありません。とはいえ経験則通りになっているということは某かのメカニズムが働いている結果なのですが、最近、テレビなどでも出てくるトルコ人のエミン・ユルマズ氏の意見に「ある程度納得感」がありましたので、ここで述べたいと思います。彼の理屈はこんな感じです(多分)。
日本は世界最大の投資国家であって、実際、推定で官民合わせて約350-400兆円近いカネが海外に流れ出ている。主に日銀とGPIFだが民間も(ミセス・ワタナベはじめ)多額の資金を海外に投資・運用している。このため日本は世界最大の資金供給国となっていて、「目に見えない影の支配者」のようなラスボスっぽい国家であり、万が一にも日本に投資カネが回帰するような事が発生すれば世界がデフレ化し大混乱になる。
そして日本がそんな世界にカネをばらまくようになったのは長年続いた金融緩和+超低金利政策のためであり、現在の世界的なインフレは日本から海外に多額のカネが流れ出た結果。特にドル一強の理由の相当な部分が「日本がドルを買いまくっているから」つまり「円キャリートレード」の結果という事のようです。現在の世界的なインフレが収まらないのは日本の低金利政策のせいであり、日本が低金利政策をやめて金利の正常化〜たとえば金利2%くらいになれば円キャリートレードの旨味がなくなる+日本に投資してもインカムゲインが得られることから、世界中にばらまかれた日本のカネが回帰を始めるレパトリが発生し、このことで世界的なデフレ…経済が急減速するはずで、そうなって初めて米国景気が劇的に沈静化し、高金利も低下してインフレが終熄するはずだ…という理屈です。要するに現在の円安は日本の低金利政策のせいであり…
日本の低金利政策
→世界に(ドル化して)円が流れ出る
→世界、インフレ収まらず(カネが多すぎるので)
→米国、インフレ対策に政策金利をあげざるを得ない
→米国長期金利上昇→日米長期金利差拡大 = 円安
…というメカニズムということのようです。
ワイ、正直「そうかもなぁ…(๑¯ω¯๑) 」と思えてきました(爆)
確かにこれだと日米長期国債の金利差でなぜ円高・円安になるのかの説明ができるからです。日本人が米国などで投資しようとしてドルを買い、円を売る。これでドルを獲得でき、海外での株式・債権・不動産などの現物投資に回せる。このカネの動きに合わせて大量のドルが日本人によって買われ(逆に円は売られて)「円安」になり、この結果が日米長期金利差に反映しているのだ、と…。
今まで我々は日米の長期金利差が開くと円安…と考えていたのですが、主客が逆で、円安になったのは日米の長短金利差が開くようなカネの流れ(日本の官民による大量の円売りドル買い)があった結果、という話でした。我々が「円安が進んだから、もう日本はオワリだ。だからドルを買って資産防衛しよう」とか「新NISAでオルカンしよう=米国に投資しよう=円売りドル買い」の末に円を売っ飛ばしてますます円安になっていた…ということです。
日本の自滅ですわね、こりゃ…┌(_Д_┌ )┐
正直な話、エミン氏のこの話は随分前から聞いていたのですが「真偽不明」として特に重要視していませんでした。しかし現状の円安を鑑み、同時に納得の行く説明のなかった日米長期金利差論に「カネの流れ」だけでシンプルに回答できたこの説は、いまとなっては「正しい」のではないかと思えてきています。全てがこの理由ではないでしょうけど、ドル円に関しては相当、「日本人の自滅的円売り」が原因と考えても不思議ではないと思われます。他の通貨に対しても円が一方的に弱いのも、「日本人が皆で円を売っているから」で納得は出来ます。
傍証もあって、元岡三証券のチーフエコノミストにして現日銀参与の高田創氏の持論に「日銀が金利を上げると世界景気後退になる」説がそれです。いままでは世界景気が後退しつつある状況の最後に日銀が金利をあげるからだ…というのが一般的な解釈だったのですが、これも逆で、もしかしたら日銀が金利を上げたために円の日本国内回帰が進み、世界から投資のカネがその分消滅するので世界景気が一気に悪化する…と考えることもできるからです。
日本、ラスボスって感じですね…(・∀・)ニヤニヤ
ただし疑問もあって、円キャリートレードは日本で低金利 (つまり負担の少ない)で円を借り、この円でドルを買って世界中にぶつける…というやり方なので「借りただけ」なので返さねばならず、その時に円キャリトレの巻き戻しが発生して円高にならないとおかしいとは思うのです。とはいえロールオーバー(借り換え)してるだけだ…と言われればそれまでです。
借りたカネならいずれは日本に戻ってくるはず。よって長期的には円高…それも巻き戻しになったらかなり強烈な円高に一気に振れるはずだとは思います。もしそうなったら、この理屈は正しいのだろうと思われます。同時に世界的な景気失速の一因になるかもしれません。世界恐慌が発生するのは、実は日銀が金利を上げたから…ということです。
もう一つの謎は、世界がこれほど日本を買い(=日本に投資している)、また日本株が40000円台にまで上昇している=日本に多額の海外からの資金が流入している=円高要因…のはずなのに、なんで円安なんだろう? という疑問もあります。今年に入って相当の額が海外から突っ込まれ、これに伴って外貨を売って円を買い、この円で投資してきたはずなのに?? …と思わなくもありません。特に東証は7割が外国人。そして個人投資家よりも海外勢の方が多額の運用を行っているということなのですから、その分の円買い(円高)が発生していておかしくはないのです。
とはいえ、これも大抵の外国投資家は自分たちの日本投資で円高になるのはわかっているので予め反対売買のスワップ契約を結んでいたり、もしくははじめから大量に円を売り飛ばしておく。こうすれば円安になるので輸出企業の多い日本株は上昇する。この株高を狙って更に日本に投資を進めるものの、同時にリスクヘッジの大量の円売りを続けて結果、「円安」…という理屈です。外国人による投資=円買いのリスクヘッジとして、株式などに投資した分以上に円売り(空売り)するので円安が進行する…という理屈です。
※ ※ ※
こう考えるとエミン氏の説、なんか有り得そうな話に聞こえてきました(爆)
いままでの理屈が引っくり返りそうな、パラダイムシフトを強要するような説です。今後、世界経済が破滅した時、この説が正しいのかどうかがある程度は見えてきそうです。その意味では将来が楽しみですね(←楽しくないわ
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【2024年5月14日補足分】
かつて民主党政権時の2011年7月に1$=78円になったことがありました。この理由として同年春の3.11後、大きな損害を受けた国内企業が海外に残置していた資本をカネに変えて日本に戻す動きに加え、主に損保生保が保険の支払いのため多額の米ドルを売却し(=円買い)その結果、当時のレートでおよそ10円ほどズルズルと円高になったことがありました。
この後、世界は各国協調の為替介入をおこなって円は下落するのですが、この協調介入の真の目的を今一度考えてみました。
当時の日本の超低金利(政策)を嫌って日本人および日本政府(日銀など)までもが海外投資に邁進していた時期で、当時から既に300兆円近い円が海外に流れていたとされています。このカネは実は世界最大規模で、しかも動きが常に海外流出という一方的な動きだったので誰も気づかなかったものの、3.11に伴う円レパトリで顕在化し、同時期リーマンショックの世界的な大ダメージから回復していない時期に数十兆もの円(=ドル)が海外から消滅することは第2のリーマンショックを引き起こす恐れがありました。このため協調介入によって円高を食い止める必要があり、実際、各国協調介入が行われた…と考えると非常に辻褄があいます。
この理屈は本編の中で述べた現日銀参与の高田創氏の「日銀が金利を上げると世界恐慌が発生する」の理屈に符号します。日本が金利を上げることで低金利で円を借りてドルにして投資するという円キャリートレードができなくなることに加え、円金利上昇による金利収入増加見込などから全世界から多額の円を引き抜く「円回帰(円キャリートレードの消失)」の動きが顕在化すると見られ、日本の金利上昇こそが世界景気破綻の原因になり得る…という円レパトリ≒世界景気破綻説(日本ラスボス論)と符号するように思えてきました。
円の海外流出は我々にとってはあまりにおなじみで、特に意識もしていないことなのですが、気づけば累積で約350-400兆円ほどと推定されていることから「相当規模が大きい」と判断すべきかと思われます。このカネが日本に回帰することはその分、世界から円(≒ドル)が消失することになり、たしかに資金不足≒信用不安から世界的な恐慌の発生の可能性も否定は出来ないのではないかということです。
もしかしたら「日本ラスボス論」も全否定できない事実かもしれません。また我々は、我々が思っている以上に世界に影響を与えている…という事かもしれません。自分たちの自虐的な行動は日本人自身の勝手な行動ですが、その結果を世界の人たちが被る〜特に悪影響を被るのならば、それは「日本人が無責任」と批難されてもしかたない「悪いこと」だと思うのですが…?
円相場、一時1ドル78円台に 2011年7月13日 10:52
https://news.ntv.co.jp/category/economy/186343
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