第七十四話 神獣様

『なんたることか、お前はこの国の王にふさわしくないとよくわかった』

「し、神獣様!」

『お前の王としての権限を破棄させてもらうよう、前王に伝えよう。それでもまだ貴様が玉座に座るというのなら妾にも考えがある』

「そんな……! 私はわが国の為にとしたまでで!」

『お前の行動は全て、自らの為ではないか! 国のものたちに目も向けず、あげくには他の村の神獣を消滅させようと異世界の者の命を犠牲にするなど、人の考えることではない!』

「すべて、すべて国のためなのです! 私はこの国のために!」

『もうお前の話などに聞く耳を持たぬ!』


 怒りを露にした神獣に言い返す言葉がなくなったのか、王はその場に項垂れてしまった。


『兵よ、この者を捕えよ』

「ハッ!」


 フクロウの神獣の言葉に従う様に兵士たちは動き出し、王を難なく捕えた。

 王は抵抗などする力も残っていないのか、顔色が悪くよろよろと足を引きずりながら歩いていく。自業自得だ。


『異界の者よ』

「はい!」

『この度はすまない事をした、いつか礼をさせてくれ』

「気にしないでください。あの王のやったことですし、神獣様には何も非がありません」

『いや、それでも我が国の王だ。私の気が済まない』


 目を細めながらいう神獣に、私は「では、わかりました」と頷く事しか出来なかった。


『喜楽と怒哀にもすまないことをした』

『あの王にしっかりとお灸を据えてくれるのなら、何も気にしないわ。今度王を選ぶときはちゃんと見るのよ』

『その通りだな』


 そして、そのまま王を捕えた兵たちは部屋を後にし、最後にフードの人は私たちに頭を下げると、フクロウの神獣と一緒にこの部屋を去って行った。

 今、ここに残っているのは私たち五人だけとなってしまった。

 スズメさんはわかる。だけどなんで金髪の魔導士の人も残ってるの?

 この人も知り合いなんですか? 本当は凄い人なんですか!?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る