第五十七話 モテる人


 だが、セイゴさんは村に帰る時間になっても戻ってくる気配は無かった。


「セイゴさん、戻ってきませんね」


 後片付けをしながら、ゼルギウスさんに話しかけると「全く、あいつは」と呆れた声で答えた。


「ゼルギウスさん、セイゴさんはなにをしに行ったんですか?」

「女とデートだろうよ。あいつはモテるからなぁ」


 やっぱりデートか。女性と二人でいなくなるんだからそりゃそっか。

 でも、ツバサさんがこのことを知ったら、さぞかし怒るんだろうな。あ、脳内で怒ってるツバサさんが想像できてしまった。

 そんなツバサさんに対して溜め息を吐いていると、バサバサと音を立てながら頭の上に何かが舞い降りた。


「ゼルギウス、伝言だ」


 ゾクゾクっと背中から脳に走るこの声色は間違いない、シュタインさんだ。

 うわー、見なくても声色で分るとか、私の体は何で判別しているんだよ。


「シュタインか、珍しいな。ツバサからの伝言か?」

「いや、セイゴからだ」

「セイゴから?」


 わざわざシュタインさんを使って伝言?

 どうしたんだろ。デートが楽しくて戻るの無理ですーとか? そんなバカな。


「デートがまだ続きそうだから、先に帰っていてくれだそうだ」


 当たっちゃったよ。


「セイゴまだデートしてるの? うわー、うわー、抜け目がないねぇ」

「なに考えてんだよアイツは……」


 とても大きな溜め息を吐いて、頭をかかえるゼルギウスさんに心底同情する。なんなのあの人。そんなに女の人に弱かったのか。


「しょうがねぇ、みんな、帰るぞー!」


 頭を掻きながらゼルギウスさんは皆にそういって、軽くまとめていた荷物をかついだ。

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