第二十四話 読めない不思議
「綾様、少々よろしいでしょうか?」
その声は今、探しにいこうとしていた人の声だった。
私としても向こうから来てくれたのは好都合だったので、部屋の中へ招き入れた。
「書物をお読みになっていたかと思いますが、邪魔をしてしまい申し訳ありません」
「いえ、何の用でしょうか?」
「ええ、これから私は門の仕事がありますので、城を出る事をお伝えしようと」
「門のお仕事ですか」
「私たちは門を守る者でもありますから、週に一度門の向こう側からの来る者を通す為に開ける仕事があるのです。他国に仕事に出ていて自宅に帰るものもいれば、他国から商売をしにくる者もいます。しかし、そのような者たちだけではなく、不審者がいるかもしれないので、取り締まりをしなければいけないのです」
城の人なのに、門の門番の仕事も請け負ってるのか。
確かに、ツバサさんの目があれば悪意のある人は見抜けるのかもしれない。
「なので、綾様には申し訳ないのですが、ここにいてもらえるようお願いできますか?なにか不便があればメイドに言っていただければ良いので……」
「あ、じゃあその前にツバサさんにお聞きしたい事が」
「なにですか?」
「この本の文字が読めないのですが、この世界の言葉だからということですかね?」
私は、読めなかった一番最初に手に取った本をツバサさんに手渡すと、どこか難しい顔をしてそれを開いた。
「一文字も読めなかったのですか?」
「はい、あ、でも表紙のタイトルは、はっきり読めます」
私の言葉に顎に手を当てて、なにかを考え始めた。
少し経つと何かを思いついたのか、ツバサさんは私の顔を見た。
「わかりました。綾様、今日は私に同行してもらえませんか?」
「え?お仕事に、ですか?」
「はい。そんな難しいことはないので、お手伝いもして頂けたらありがたいのですが」
「昨日来たばかりの私に、仕事なんか任せて大丈夫なのでしょうか」
「実を言うと、今は猫の手も借りたいという状況なのです。それに時間も余りかけてはいられない。少しでも手伝っていただけたら、とてもありがたいのですよ」
笑顔でそう言うと、私から受け取った本を持ってツバサさんは大きくドアを開けて私に部屋から出るよう促した。
私には本の文字が読めないという事の原因は結局分らなかったけど、とりあえずツバサさんの言う通りにしようと、私は手伝いをする事に決めた。
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