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「ふふふ、お酒の好みも良く似てらっしゃるんですね」
兄のキンジさんが最初にオーダーしたのがホワイト・スパイダー。弟のギンジさんがいつもオーダーするのはスティンガー。ベースがウォッカとブランデーとで違うけれど、両方ともミント風味の爽快な味わいが特徴だ。
「こいつが真似するんだよ」
「それはあんたでしょぅが」
「お前は昔から俺の真似ばっかりじゃないか。まぁ弟なら兄の背中を見て育つものだから仕方ないのかもしれないけどな」
「たかが数分の違いでしょうが」
「それでも兄だろうが」
「大したもんじゃないでしょうよ」
「ふふふ」
つい微笑ましくなって笑みが零れる。俺よりも年上の、お茶目でダンディな男性が兄弟で言い合うなんて。仲が良くて羨ましい。
「仲が良いだなんて、そりゃぁ検討違いだよ、マスター」
「おや、どうしてですか?」
こんなに楽しそうに言い合っていると言うのに?
「だって同じ会社で働くのが嫌で両方とも各々で会社を立ち上げたくらいなんだから」
「え、そうなんですか?」
同時に頷いた二人は同じような動作で胸ポケットから名刺を取り出して差し出してくれた。
キンジさんは縦長でチャコールの紙に金箔押しの、ギンジさんは横長で藍色の紙に銀箔押しの名刺だ。そこには双方とも各々の建築会社の名前と代表取締役の言葉が書かれてある。うーん、形は違えど、やっぱりどことなく似ている。さすが双子。選ぶ服のコーデもそっくりなんだから、名刺のデザインが似るのも仕方ないのかもしれない。
でも同じ業種でこんなにセンスが似ているのなら潰しあいになるだけでは?
「それが意外と作る建物の方向性は全然違うんだよね」
「それは意外ですね」
「そうかい? 確かに顔は似ているけれど、双子って言ったって中身は全然違うからね。俺にはこいつみたいな家は作れない」
「それは同感だね」
なるほど。双子同士、相手のことを認め合っているって訳
「「だってセンスないもん」」
・・・ではなかったみたい。
「何言ってんだ」
「そっちこそ」
いやはや仲が良いのも困りもの、ってやつ、かな。
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