磁石
カゲトモ
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「いらっしゃいま、あれ?」
つい、目の前で起こったことに首を傾げてしまう。きっとはたから見ていたら、頭の上にクエスチョンマークが飛んでいたに違いない。
「・・・ギンジさん?」
「うん、そうだよ」
「・・・?」
目の前の男性は光沢のある銀のスカーフを首元に巻いて、被っていたハットを脱いでにっこりと微笑んだ。
やっぱりさっき来店したのはギンジさんじゃなくて・・・もしかして例の?
「あ」
そんな俺の表情を読み取ったのか、ギンジさんはハッとした顔をして店の奥に視線を送った。すこし前にそこに座ったのは一人の男性だ。
「なんでここにいるんだよっ」
ギンジさんは驚いた風にしてその男性に向かって歩く。男性も男性で、驚いた風な顔でそちらを見ていた。いや驚いたのはこっち!
なんで同じ顔の人が二人もいるの!?
「なんでってなんででもいいだろ、お前には関係ない」
「いや、関係ないとかじゃなくて、なんでここ知っているの。僕言ってなかったはずなのに」
「俺だって聞いてないよ。ただ良さげな店に入ったら後からお前が来たんだろ」
「嘘だ」
「嘘じゃないって」
隣に座った、二人の同じ顔をした男性が小声で言い合う。怒ったような顔も全くそっくりだ。
「もしかして、ギンジさんのお兄様ですか?」
「「うん、そうだよ」」
わぁお、ぴったり。
そうかやっぱりこの人は以前ギンジさんが言っていた双子のお兄さんか。性格は違うけど見た目は瓜二つだって。
髪形と言い、服装と言い、顔だけでなく雰囲気まで鏡合わせの様だ。だって二人ともダンディなスカーフとハットがよく似合っているもの。
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