#7 本当に喋れないの?

 男はといえば、黒髪の少女の話を聞いて、また怪訝な顔をしていた。


“Si esである waxundeener......?”

“Ja ti, si esである waxundeener.”


 どうやら話し声に気づいたようでシャリヤは起き上がって、男の問いに答え始めていた。男はさらにシャリヤに問いかける。


“Jei, costi, hame la lex esである iulo?”

“Si josnyn yuihurk mal la lex voles niv filx werlfurp mag si g'es waxundeener, deliu kanti lineparine.”


 「ふむ」という感じで男は頷いていた。当然だが、翠には長文は全く分からない。まだ「……は……である」という形式の等式文くらいしか分かっていないのだ。


Mi es lexerl私はレシェール. Si'd aloajerlerm es harmie?”

Si es......〇〇は……だ


 シャリヤは困ったようにこちらを見てきた。文脈的に考えて、男の名前は多分レシェールでレシェールは俺の名前を訊いているのだろう。コミュニケーションのチャンスだ。

 今まで覚えてきた単語を駆使して異世界人からの信頼を勝ち取ってやる。これこそ異世界もの主人公の真髄――ご都合主義戦法ストラテジー・オブ・オポチュニズムだ!


(そんな表現があるかどうかは知らない)


Salarua!どうも! Mi es Jazgasaki.cen!私は八ヶ崎翠です!


 そう勢いよく言い放つと、シャリヤも黒髪の少女もレシェールという男もみな「え?」という顔をした。調子に乗りすぎて、なにか間違えたのかもしれない。


“Jei, vaj. Edixa co lkurf ny la lex fal lovik nestil? Cene niv si lkurf lineparine.”

“Ja...... ja, pa edixu cene niv si lkurf...... Merc, cenesti.”


 シャリヤが、翠を指さして、こいつは怪しいとばかりに顔を近づけてくる。絶対に何かを間違えた。完全に何かを疑われている雰囲気だ……。


“Cirla io, Cene coあなた lkurf lineparine?”


 翠は、さらに詰め寄って訊いてきたシャリヤの怪訝そうな顔に、何かを失敗したことを確信した。

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