雨が止まない屋敷

よもぎ

第1話 雨の日。屋敷にて。

窓は曇っている。大粒の水滴があたりの景色を隠していた。雨が滴る音で屋敷の中は少し明るくなった。雲行きが怪しく、遠くからしばしば雷も聞こえる。雨音が屋敷の中で響く。

「では、状況を整理しましょうか。」

50代後半あたりだろうか。立派な髭の白髪の男が低い声でそういった。

「この屋敷、広すぎないか?」

それに反して混乱した表情でそう言ったのは茶髪の、大学生だろうか。背の高い男で濡れた髪を気にしながら言った。

確かに広い。教会のような、高い天井でこの空間は奥まで続いている。雨のせいで湿度も高く蒸し蒸ししている。

「皆さんはこの屋敷になぜ来たのですか?」

先程の男がそう問いかけた。少しざわついたがまた沈黙がおとずれる。雨の音が全員の鼓膜に響く。この空間には年齢も幅広く数十人の男女がいる。全員、表情は暗い。雨のせいだけではないだろう。全員何が起きたのか分かっている。

そう。屋敷の玄関の前、我々の目の前で人が死んでいるからだ。


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雨が止まない屋敷 よもぎ @Nikki_07

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