放課後暇ですか?戦争で忙しいです

ならや

1限目 「暇ですか?」「すんませんこれから戦争なんで」

「アーチャー、来たかー?」

『隊長、もうちょい真面目に......来ました!』

「来たかー。規模は?」

『うわ、結構居ますわ。1番脅威なBMP-1が1両、ZU-23-2搭載テクニカル2両、その他随伴歩兵が20人ってとこですかね』


無線機に耳を傾けつつ舌打ちする。

彼はアメリカ製小銃のM1ガーランドを抱えてヘルメットを被り土嚢の裏に隠れている。

周りの土嚢にも数人が隠れている。

BMP-1とは旧ソ連が開発した世界初の歩兵戦闘車である。

兵装としてAT-3サガー対戦車ミサイルと73mm砲を備えている。


「面倒いなぁ、BMPとか。アーチャー、交戦開始と同時に狙撃開始、テクニカルと指揮官優先な。無理すんなよ、サガーも73mmもあるからな」

『了解』

「よし全員来たぞー。アッカー準備は?」


ひょこっと頭を出すと数メートル先から走って来た人に声をかけた。

その人は女性と言うには幼く、女子と言う方があっているだろう。


「アッカー言うな。シバくぞ」

「悪ぃ悪ぃ。で、準備は?アリス」

「ったく.....準備は完了、敵は有刺鉄線で止まるからそこで吹き飛ばせる様に仕掛けたわ」

「流石!今度からボマーアリスって呼ぶね!」

「ロンメル、本当にシバかれたいの?アンタもまとめて吹き飛ばしてあげようかしら?」


アリスと呼ばれた女子はこれまたアメリカ製のトンプソンM1を抱えて土嚢の裏に隠れる。

その隣にはさっきから指示をしているロンメルと呼ばれる者がいる。


「タイチョー」

「何だーハマー」


呼ばれたのでそっちを見るとBARを土嚢に乗せている男、ハマーが居た。


「M72ロケットランチャーの発射許可を!」

「ダメだ。お前この前後ろ弾になっただろうが」

「アレはしゃあないじゃないですか!敵にはBMP-1居るんすよ!?」

「ボマーアッカーが纏めて吹き飛ばしてくれるから大丈夫げふっ!」


ボマーアッカー等と呼んだ為隣にいたアリスが持っていたトンプソンで思いっきり殴った

ちなみにロンメルが言っている後ろ弾(味方を後ろから撃つと言う凶悪な行為)は前の襲撃時、ハマーにM72の発射許可を出したら自分が隠れている土嚢を吹き飛ばされた事を言っているのだ。

ハマーは別にロンメルの隠れている土嚢を狙って撃ったのでは無い、断じて。

理由としては土嚢に立て掛けていたBARが倒れてM72に当たったせいで向きが変わってしまったのだ。

ロンメルもすぐ気付いて土嚢から飛び出したので怪我人も出なかったが、その1件があってロンメルはM72が怖くなったらしい。


「あー、ハマーもし敵が爆破を突破するようなら遠慮なく撃て。そんな旧式とっとと撃ち尽くさないと新型が来たらお役御免だぞ」

「え、新型来るんすか?」

「来るぞ。俺が上に掛け合って配備させた。何かは知らんがSMAWスモーだかがアメリカ海兵隊から供与されるんじゃないか?ペッタン、なんか聞いてるかー?」

「隊長が知らない事を私が知る訳ありませんわ!それと私だけ名前おかしくありません!?」

「ハッハッハ!知らねぇな!」


自分が知らない事を別の土嚢に隠れているペッタンと言う女子に聞くも怒られ豪快な笑いを返す。

無線機から声が聞こえている事に気付いたロンメルが無線機を掴むとアーチャーの声が聞こえた。


『隊長聞こえますか!』

「あ?聞こえてるぞ」

『ようやくですか!もうすぐ敵が目視できますよ!』

「あー......見えた。切るぞ」


アーチャーからの報告を聞いて土嚢から目だけを出して見ると有刺鉄線の前でスピードを緩めているBMP-1とその斜め後ろを着いてくるテクニカル、そして周りを囲む随伴歩兵が居た。

それだけを見て頭を引っ込め隣のアリスに目線を向ける。

アリスもこちらを見て頷く。

その手には起爆スイッチが握られていた。


「アリス、カウントするから0で爆破しろ」

「分かった」

「行くぞ....3、2、1、0スリー ツー ワン ゼロ!」

「起爆!」


ロンメルのカウントダウンに合わせてアリスが起爆装置のレバーを握る。

それとほぼ同時に有刺鉄線付近に埋められていたC4爆薬が起爆、敵部隊を吹き飛ばした。

BMP-1でさえ空中に舞う様な大爆発はテクニカルを木っ端微塵にし鉄クズに変えた。

ロンメルを含めた全員が顔を出して見るが生きている敵は居ないようだ。


「全滅だな」

「全く、私達は誰相手に戦争してるのかしら?」

「知らねぇな。んなもん分かってたらとっくに戦争は終わってる」


ロンメルとアリスが言う通り、今回も敵部隊の正体は分からない。

ただ敵の損害、世界中で軍事行動を起こせる規模からして何処かの国家の軍隊という訳でもない。

その証拠に今爆破で殲滅した部隊の兵士と思われる遺体は

つまり、彼等は人間では無い何かと戦わされているのだ。


「たまに思うのよ...これはどれだけ悲劇を繰り返しても反省しない人間に懲罰を与える為神が創り出したんじゃないかって」

「アリス、お前は現実主義者だと思ったが?」

「ロンメル!」

「はは、冗談だ。だがまぁ、そうだったとしたら神は工作が大分下手くそだ」

「あなたも分かるのね、人間臭さが」

「ああ.....妙に人間臭い。敵からは迷いの様な物さえ感じる時がある」

「ええ....あれは間違いなく迷いよ」


2人が感じている違和感

敵からは確実に迷いの存在が確認出来る。

それもまた、敵が分からない一因だ。

ただ、分からない事はそれだけでは無い。


「装備もよくわからん。主兵装はSKSカービンやらルイス軽機関銃やらだ。手榴弾はWW2のドイツが使ってたM24柄付手榴弾だしな。人間への懲罰なら最新兵器を次々投入すりゃいいだろうに。なんで旧式なんだろうな」

「こっちの装備も似た様な物よ。ガーランドかトンプソン、分隊支援火器にはBARで対戦車兵器はM72LAWだし。スナイパーライフルもそれ用として生産された物じゃなくてガーランドの改良型のM1Cだから。サイドアームがガバメントってのが唯一の救いね」

「だから上に掛け合ってんだろう。とっとと64式かM16、もっとマシなスナイパーライフルに分隊支援火器を回せってな」

「何処も彼処も銃は足りないんじゃない?」

「たく、ふざけてるったらありゃしねぇぜ」


敵の武装はSKSカービンやルイス軽機関銃である為、正規軍はそれほど苦戦はしない。

だが、彼等のような学園防衛隊と呼ばれる学生部隊に回される装備は予備もしくは廃棄予定の旧式のみであり、第二次大戦に使われたガーランド等が主兵装なので五分五分と言った所だ。

サイドアームのM1911A1コルトガバメントは現代でも特殊部隊等で愛用されており、学園防衛隊に回される装備の中ではマトモな方だ。

彼等の敵とは、数年前に突如現れ世界各国に攻撃を開始した謎の軍隊だ。

装備こそ旧式だがアメリカ軍やロシア軍を圧倒する物量で世界各国を防戦一方へと追い込んでいる。

人海戦術が十八番だった中国人民解放軍でさえも逆に人海戦術で壊滅させられた。

日本も攻撃を受け自衛隊が大打撃を喰らったせいで日本全国を守れるだけの戦力を確保出来ていない。

そこで学生に武装させて自衛させ、自衛隊の一員として戦ってもらう学園防衛隊なる物が設立されたのだ。

反戦運動もあったが、国民からの反対を受けて静まり返った。

事実、自衛隊が反戦運動により身動きが取れない為に北海道、青森県への救援が遅れ青森県を放棄、北海道も函館周辺以外の土地を完全に掌握されてしまう事態まで発展した。

ロンメル達の学園、石川県の志賀町近郊にある志賀山陰青龍高校は能登半島防衛の要とも言える存在だった。


「敵はもう居ないな。撤収だ!」


ロンメルが命令を出すと校舎へと戻っていく者達。

彼等はとりあえず、生き残ったのだ。

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