父の帰宅



その人を何かに例えるなら暴風雨と表現するのが適当だろう。

そう言われるのに差し障りがないほど、康太の父、入江光一は荒れ狂っている人であった。

何をするにも極端であり、何をするにしても唐突なのだ。

康太はそんな父親のことが少し苦手ではあった。


「お?おせえじゃねえかバカ息子」

「お、親父?」


突然いなくなったかと思ったらいつもすぐ現れる。

彼はそんな男だ。

流石に康太もそんな父親の行動に、これまでの溜まりに溜まったストレスを発散するように光一にあたる。


「一体今までどこ行ってたんスか!?つかいつ帰ってきたんスか!?」

「いきなりギャーギャーうるさいっての!」


両耳を塞ぐ光一は喚き散らす康太と距離を取るように身体を仰け反る。

そんな康太の荒げる声に反応したのか。

リーシャがハイネを抱えたまま飛び込んできた。


「康太様!...えっ!?」

「お?リーシャちゃんおひさ。可愛くなったねえ」


リーシャを見るや否やおちゃらけた声でリーシャに挨拶する光一。


「一体いつお戻りに?」

「2時間くらい前。だーれもいないんだもん。びっくりだぜ」



手に持つ酒瓶をテーブルの上に置いて光一は立ち上がる。


「今まで何してたんスか?」

「募る話はあるがとりあえず今日は寝るわ。疲れたんでな」


ヒックと喉を鳴らし、光一は部屋を出ようとする。


「親父!」


それを引き止めるように康太は父親に声をかける。

あん?と光一は振り返り、康太からでる言葉を待つ。


「......おかえり」

「おう、ただいま」


二人とも素っ気ないやりとり。

形式的なものだとしても、やはり二人は親子なんだなとリーシャは心の底で思っていた。

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