閑話休題
康太が今まで戦ってきたのは基本的には人間ではなく魔獣だ。
そもそも現代において人間同士が協力することはあっても戦争する余裕がないというのが現状だ。
魔獣が現れてから起きた戦争は片手の指でかぞえることの程度で戦力的にも魔獣にも気を配らなければならないので余力がないのだ。
「彼・・・というか彼らは精霊を集めようとしてる。リーシャとハイネも存在がバレたら狙われるだろうね」
「ごめん、多分リーシャが精霊ってのはバレてるかもしれないっス。けどなんで精霊を?」
「魔獣堕ちをさせるつもりらしい」
「なっ!?」
精霊はもともとこの世界に存在しないものだ。
精霊は精霊界にのみ存在することができ、こちらの世界に居続ければ1週間ほどで消滅する。
消滅しない方法というのはいくつか存在するが、その方法の一つで、魔獣に堕ちてしまう精霊もいるのだ。
精霊は魔力の塊であるがゆえに野良の魔獣に比べ格段に強いものになる。
「もしバレてるんだとしたら、これからはリーシャを一人きりにしてはいけないよー」
「わかったっス」
「それから、まだニュースとかにはなっていないけど、今日世界各地にある結界都市全てに魔獣が出現したんだよー。それもおそらく同時刻でね」
息を飲んだ。
つまりその組織とやらは世界規模で魔獣を操ることができるということだ。
「そこで康太っち。別にこの組織を壊滅させろとは言わないけどせめてあの子たちを守ってあげてー」
「いや、そんなのとやり合うビジョンが見えないっすよ」
戦力が世界規模の相手に対して一人の人間が組織を壊滅に追い込めるか。
否に決まっている。
像対アリでアリの勝利に賭けるほうがまだ希望が持てるというものだ。
それに康太は精霊使いだ。
精霊使いとは精霊の存在を明るみにさせない為の存在だ。
これは同じ精霊使いであり、師である康太の父からの教わったことだ。
その教えを守る為に、康太は誰かのために力を使うことはあっても精霊達が明るみになる戦いには極力関わらないようにしている。
「そのつもりっスよ」
「というわけで明日ハイネも連れて帰ってねー」
「・・・ハイネはここに置いておいても問題ないと思うんすけど」
正体バレてなさそうだしと付け加える。
別に康太はハイネが嫌いだとか苦手だとかそういうわけではない。
ただ単純にうるさいだけだ。
「いやいや、ここは精霊使いさんの元に置いておいたほうがいいと私の勘が告げている」
「......適当じゃないっスよね?」
「本当本当ー!」
奏の勘は意外と馬鹿にならない。
過去これまで奏が勘を外した事があるのは1、2回あるかないかだ。
「わかったっスよ・・・」
またわがまま娘の面倒を見なければならないのかと項垂れる康太であった。
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