奏という人物

タワーを降りた後、街の隅っこにある大きな裏山に向かった。

滅多に人が来ない山な上に、幽霊がいたなどの噂があるせいか一際近寄りがたい雰囲気がある。しかし康太達が目指すのはその麓にある一件の家だ。

家は和風で昔ながらの家という感じの一軒家だ。

ただし周りには他に家や建物が見当たらずただポカンと一つ家が佇んでいるせいで、後ろの裏山が不気味さを掻き立ている。


「リーシャ。ついたから起きてほしいっス」

そう言って背中を見てみるとすうすうと寝息を立てて寝てるリーシャの寝顔がそばにあった。

「こりゃ起こすのも可哀想か」


ピンポーンと呼び鈴を鳴らして10秒後くらいだろうか。

家の中から一人の女性が現れた。

髪はボサボサで目の下にはクマが出来ていた。

服装は白いシャツにジーパンというラフな格好でその自由さは見て伺える。


「こんばんは奏さん。ちょっと遅くなったっス」

「全く遅いよ。けど道中で色々あったろうからまあよしとするよ」

「気づいてたなら助けてくれてもいいじゃないっスかー」

「君ならなんとかできると思ってねー」


彼女はそういうと玄関を開けたまま奥へ入って行った。

追いかけるように急いで玄関で靴を脱ぎ、リーシャを起こさないようにして彼女の後をついて行った。

そして廊下の奥にある襖の扉を開けるとそこに一人の少女が机の上に顔を伏せて寝ていた。

オレンジ色の髪に少し幼い顔立ちをしている。

そして問題なのは服装だ。

上の服がシャツ一枚というのは全然問題ない。

しかし下がパンツだけというのはどういうことだろうか。


「奏さんなんでこいつこんな格好なんスか?」

「私に言われても。気がつくとすぐこの格好になってるのよねー」

「ハイネー。起きてくれー」

「うーん」


ハイネと呼ばれた少女が起きる気配がまるでなかった。


「こりゃ今日は起きそうにないっスね」

「まあ今日はとまっていきなさいな。あと今日のことで色々話しておきたいし聞いておきたい」


奏がそういうと二人の間に緊張の糸が張り巡られた。

小さくうなずき返して部屋を変えるよと言わんばかりに奏は笑顔で部屋を出て行った

二人を部屋にあるベッドに寝かせてから奏が待っているであろう部屋に移動した。

着いた先は至って普通の家にあるリビングだ。

なにが違うかといえば部屋に流れている空気だ。

こんな張り詰めている空気は普通の家庭にはそうそうないであろう。

奏ではお茶を入れていて、康太は椅子に座って話を切り出されるのを待った。

お茶を出されてそれを飲み、奏も両手で湯呑みを添えるようにしてお茶を一口飲む。


「どうこのお茶ー。なかなかいいでしょ」

確かに美味しい。今まで飲んだことのない種類のお茶だ。

「そうっスね。何のお茶っスかこれ?」

「100g1万円の高級茶だよー」

「ブッ!!」

「きゃあ!」

口に含んだ飲みかけのお茶を吹き出した。

「もう汚いなー」

「いや奏さんが何でそんな高級茶持ってるんスか!」

すかさずポケットに入っているハンカチで、机に巻き散らかしてしまったお茶を拭いた。

自分の事にしかお金を使わない彼女がなぜお茶にお金を使っている事に驚いた。


「いやあ、今日魔法省の支部に寄る用事があったからちょっとだけくすねちゃった」

「そのうち怒られるっすよ」


そして再び両者は正面を向かい合った。

一呼吸おいてさきに切り出したのは奏だ。


「まずは伝えておくことを伝えておくよー。今日康太っちが戦ってた人たちの話だよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る