9.
最後の仕上げは樽前が買って出た。
紙コップに少しずつインスタントラーメンをよそい、割り箸と一緒にサエと篁の前に差し出した。
二人ははじめ遠慮してみせたが、樽前が「みんなで食べなければ意味がないんだ」と勧めるので、それではと同じテーブルについた。
一口目は樽前から。
いただきますと言ってから音を立てて麺をすする。
何の変哲もないインスタントラーメンだが、口に運び、ゆっくりと味わい、目を閉じたところで樽前は口もとをほころばせた。
「そうそう。この味だ」
嬉しそうに、そして懐かしそうに言う。
その様子を見届けてサエたちも紙コップに入ったラーメンを手に取った。
「わあっ!」
とサエが声を上げた。
その声に驚いて樽前が目を開く。
「……これは?」
この三途の川のホトリ食堂において美味しいものを分かち合うためには、たったひとつ条件がある。
『味だけでなく、思い出も感覚も分かち合うこと』
ひとり思い描いていたはずの風景が目の前に広がっていることに驚き、樽前は手に持っていた紙コップを落としそうになった。
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