第93話 接触
「あちゃ~。このマップだと狙撃し難い…。」
「はい、はい。決まったものに文句言っても変わりませんよ。」
副部長が嗜(たしな)める。
「言ってみないと…。ほら、もしかしたらって。」
と、笑う小南。
「作戦はどうしますか?」
二人の会話に割り込む百地。
「小南さんが狙撃の位置取り出来るまで時間稼ぐ…、だといつも通り?」
「いつも通りですが、最善作では?」
「どうですか? 狙撃位置取りの目星は付きましたか?」
「何箇所か候補はあるけど、実際に行ってみないと…。」
「確かに。」
少し考える副部長。そして、
「今回の相手チームは、積極的に近付いて来そうですから、早目の位置取りが重要かもですね。」
「だね。チームの編成みると近距離から中距離メインの構成だし。」
と、小南が賛同する。
「後は、どんな布陣で来るか…。」
と、百地も。
「考えても、解らない…。だったら、それを楽しみましょう。日向さんみたいに。」
副部長の一言が、二人に気合を入れた。
「だね。」
「承知。」
『あらら、なんだかんだでライバル視してるんだ。私も負けられないな。』と
、副部長も気合が入る自分に言い訳をした。
3、2、1…[START]!
試合開始と同時に六機が動き出す。
「いつものフォーメーションで!」
鮫島青波が支持する。
「了解!(✕2)」
三機が集まり、黄色機体を先頭にした三角形の形をとる。進行方向に対して右が赤色機体、左が青色機体。
小南が目星を付けていた場所へと、
「ここなら、何とか狙撃出来そうだ。」
狙撃のゴーグルを全面を下ろし、機体の片膝を着く。その狙撃体制から、索敵を始める。
「どこだ…。どこだ…。」
しばしの後に、
「居た! 皆の位置から北北東。」
「了解です。」
「承知。」
「行くよ…。」
始まりは一発の銃弾。狙い澄まし『ズキューーーン』と放たれた銃弾。
『カッキーーン』と弾かれる。
「げげ、なんて装甲だ。あの黄色は。」
正確には、構えたシールドによって弾かれていた。
「絶対防御! このシールドに弾けない攻撃は無し!」
見栄を切る豹頭黃亜。
「狙撃距離まで接近。フォーメーションチェンジ。」
指示を出す鮫島青波。日向の指揮機の見立ては間違ってなかったようだ。
三角形を描いていた並びから、黄色、青色、赤色の一直線の列びへと。そして、黄色い機体は全面に大きくて分厚いシールドを突きだす。
「狙撃し辛い陣形取った。」
「了解。私と百地さんで仕掛けます。」
「承知。」
「じゃあ、隙間にぶち込むよ。」
「行きますよ。」
副部長は百地を引き連れて、小南が指示した方向へとダッシュした。
「そろそろ見えるはず。」
と、小南。
「では、挨拶を。」
機体を止める副部長。まだ見えない相手に向かい。
「それっ!」
両肩、両脚のミサイルを一斉に発射した。
「熱源接近。ミサイルです。」
強化センサーの効果で、熱源探知が可能となっている青色機体から、鮫島青波の指示が飛ぶ。
「了解!(✕2)」
黄色機体はシールドの角度を調整し、青色機体はシールドを構える。そして、赤色機体は青色機体との距離を詰めシールドの効果範囲に入った。
列ぶ三機にミサイルが飛来する。
「大丈夫か?」
鷲雄赤音がもらす。
「まだ、こっちを確認していないはずなので、挨拶かと。」
冷静に答えた鮫島青波。その考えが正しいと直ぐに判る。
ミサイルは近くに着弾し、爆炎を上げるが、三機はそのまま一直線に進む。
「うひょー。冷静な判断だ。」
小南が感心する。
モニターの奥発見し、
「確認しました。」
と、副部長。
モニターに小さく映る。
「確認。」
と、豹頭黃亜。
副部長が突っ込みながら、肩ミサイル後ガトリング砲。ところによって脚ミサイル。
百地は機体の速度を活かし、四方八方から攻撃を仕掛ける。
副部長と百地の攻撃で、列ぶ三機の陣形が崩れたところに
「そこ!」
『ズキューーーン』狙い撃つ小南。
『ガィィィィィン』と受けて立ったのは黄色機体。ターゲットとの間に上手く入りシールドで防御していた。
「完全にこっちの動き読まれてるな…。」
次弾を装填しつつ、
「それなら、それで。」
次を狙う。
「このポジションなら次に狙われるのは私のはず。」
狙撃が行われる方向へシールドがある左側を意識し晒(さら)す鮫島青波。
常にこちらに向けられたシールドを見て、
「あの青色機体が指揮機で間違いなさそう。」
と小南。
「では、青色機体を狙ってください。私が赤色と黄色を足止めします。」
副部長がガトリング砲を構える。
「百々っち、崩しよろ!」
「承知。」
百地が青色機体に仕掛ける。
「こっちは。」
副部長のガトリング砲が火を吹き、赤色機体を光の筋が追う。
赤色機体は素早く黄色機体の陰に入る。『カンカンカン』とシールドが弾を弾く。
「おまけ!」
ミサイル発射のトリガーを引く。放たれるミサイルは、シールドごと黄色機体を炎に包む。爆炎が爆煙に変る。
煙の尾を引き爆煙から飛び出すバズーカの弾が三発。
回避行動ととりながら、ガトリング砲で反撃する副部長。爆煙にガトリング砲から放たれた光の筋が吸い込まれる。
左側に爆煙が伸び黄色機体が飛び出て来る。
咄嗟にガトリング砲の向きを変える。追従して光の筋も向きを変えた。
「しまった!」
直後、黄色機体と反対側に爆煙が伸び赤色機体が飛び出した。
遅れガトリング砲の向きを変えたが、赤色機体の速度には追い付けない。せめてもの追撃とミサイルを撃つが、期待はできない。
「ごめん。赤色機体が、そっち行った。」
「了解。こっち気にしないで、そっちに集中して。」
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