第92話 スリー・オン・スリー
「それでは、〈スリー・オン・スリー〉開始です。」
先程名乗ったチームの三人ずつ計六人が、一段高くなった場所に上がった。そして、コックピットへと入る。
用意されたコックピットは、直方体で向かい合っている反対側に開いてシートが出ている。
皆が、中へ入ると『ガァーッ』ってコックピットが閉まった。カッコいい。
しばらくすると、
「準備ができたみたいです。これより、機体のセットアップに続いて、マップセレクトを行います。」
このアナウンスは観客の女子生徒向けだね。
どんな機体使うのか、楽しみだったんだと期待しながら、大型モニターに目をやる。さっきの名乗りが画像が小窓で機体が全体で映し出されている。
うちのチームは、いつもの機体だから割愛…本当に割愛なんだから。(割愛の意味を調べたんだらね。)
相手のチームはと…。
シキクラ・エレクトロニクス社の機体をメインに使っているのか…。
確か…
機体のデザインが、曲線で作られているのが特徴で。女性の様な美しいフォルムが売り。設計の段階から内部構造を見せないが徹底している。この事が、内部へのクリティカルな被弾率を下げている。その反面、少し反応が重く感じられるとか…。
と、教えてもらった。
そこに映っている機体は、本当に角(かど)が無いデザインだ。
えっと…。相手チームの機体を紹介しないとだね…。
やっぱり、こういう時は赤からでいいよね。
赤の人[鷲雄赤音]さんの機体は、【螺通盗(らっと)】シリーズで細身の軽量型。百地先輩の機体が超軽量型だか、それよりは大き目。
ベースが銀色で、頭、腕、胴、脚と全身に赤色の部分がある。そして、アクセサリーで胸に、たぶんだけど【鷲】の顔が付いている! 付けた人、解ってるな。って、事は…他の機体も…。
武装は見た目から判断するしかないけど。判る範囲で、両手にハンドマシンガン(片手使う奴)。片手剣が腰の左右に下がっている。軽量タイプだから、あっても後一個ぐらいかな?
機動性を活かした戦い方をだろうね。
青い人[鮫島青波]さんの機体は、【風路久(ふろっぐ)】シリーズで、見たまんまの汎用型。カエルの様な丸い頭は、ちょっと可愛い。
ベースが銀色…、後は全身に青色の部分がある。当然アクセサリーで胸に【鮫】の頭が付いている。うんうん。
武装は、右にヘビーマシンガンと背中側に下から出すキャノン砲(みたい)。左は中型のシールドだけど、肩に付ける奴だ。可動域は、少し狭いけど武器の両手持ちが使える。後、白兵武器が装備されているとは思うけど、よく見えない。
頭に付いてるのは強化センサーみたいだけど、指揮機かな?
黄の人[豹藤黃亜]さんの機体は、【悟李羅(ごりら)】シリーズで、大きい重量タイプ。副部長さんの機体よりも大きいんじゃないかな?
ベースが銀色なのも、全身に黄色のパーツが付いてるのも、胸に【豹】の頭のアクセサリーが付いてるのも同じ!
武装は、右に大っきいバズーカ砲。で、背中に付いている装備は、たぶんバズーカ砲に弾薬を補給するやつじゃないかな。左に超大型のシールド。機体がかなり大きいんだけど、シールドは更に大きくて全身をカバーできるサイズ。絶対に重いぞ、あれは。
三機を見て『いつ合体してもおかしくないな。』と…、世界が違えば、間違いなく合体してるはず。
「機体が決定されましたので、続いてマップを決定したいと思います。」
大型モニターで、いつものマップ選択ルーレットが開始された。
色々なマップが、くるくると高速で切り替わっていく。
しばらくすると切り替わりの速度が落ち始め、ゆっくりになった。もう直ぐ止まりそう。
止まった。
「決定しました! 今回のマップは『桜並木』。ちょっと季節外れですが、美しいマップになっています。」
確かに、中サイズのマップの真ん中の河を挟んで、堤防に桜の木がいっぱい。
更にマップの至るところに桜が咲いている。マップ全体が桜色。
「桜並木の対戦…。そう、まさに『桜対戦』です。」
いや、そのタイトルはマズいんじゃあ…。と、聞こえてきたのは、
「どこのゲームタイトルですか。」
美星先輩が、アナウンスに突っ込み入れてた。流石、突っ込み担当。
マップは、それ程高低差は少なく、平原の木が桜に代わった様な感じだ。
舞う花びらが、風を桜色に染めているのは、本当にCGかと思うぐらい綺麗だ。
これが、リアルな戦いだと『桜並木を血に染めて』になりそう。
「なお、今回のレギュレーションは大会と同じく、時間は10分間。レーダー範囲は小となっています。補正がなければほぼ有視界です。」
アナウンスされたのは、観客向けなのは前と同じ。
「準備が整った様なのでぇ…。」
と、区切り、
「それでは、皆さん。ご一緒に!」
体育館を埋め尽くす女子生徒全員が、右手を握りゆっくりと下に引いき、アナウンスに合わせ、
「パンツァーァァァァァ!」
その声は、うねりとなり、
「ファイトォォォォォ!」
体育館を揺るがし、
「イェーガーァァァァァ!」
極限まで引き絞った右手を
「ゴォォォォォォォォォォ!」
と、同時に右腕を高く掲げる!
私は今凄いものの目撃者…、違った当事者となった。
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