第46話 変更
日課に変化と言うか、新たに追加された項目。
タイヤを背負いランニングの後に、タイヤチューブを使っての筋トレをやるようにと。
とりあえず[チューブ筋トレ]と呼んでおこう。あんまり、約すと意味が解らなくなるから…。これぐらいで許しておこう。
それはやり方が、細かく指示された本格的な筋トレだった。
で、気になっていた事を恐る恐る部長さんに聞いた。
「あの、この筋トレは何に効果が?」
「これは、持久力アップで集中力を超時間維持する為のトレーニングですよ。」
「なるほど…。」
「きっちりと体を作っておかないと、覚醒に耐えられないでしょ。」
ニッコリと答えられた。
昨日のは本気だったぁぁぁぁぁ!
「今の流れを3セットやってください。」
「解りました。」
やる事は、簡単だけど…。結構、『ぷるぷる』来る。筋肉に負荷かかってるのと、私の筋力不足って証拠だ。
たかがゲームと思っていたけど…。やってみると、持久力に瞬発力と結構ハードなスポーツだ…。
持久力と筋力つけないと…。強い人と戦えないと改めて解った。
頑張ろう!
と、思う葵であった。
「百地先輩! 後ろからナレーション入れないで下さい!」
「ばれましたか…。最近、日向んの声真似を会得したので、やってみたのですが。」
「うん、うん。似てた、似てた。」
小南先輩が褒めた。
「今度は、腹話術と合せてやってみようと思っているのですが…。」
「おーっ! 面白そうだ。」
二人で盛り上がってる。って、百地先輩。そんな技まで持っていたとは、凄いな、やっぱ忍者の末裔(まつえい)は本当みたいだ。
三セット[チューブ筋トレ]を終わらせると、体中が『ぷるぷる』になっていた。
「えい!」
後ろから突かれた。
「ぎゃいん。」
と変な声が漏れた。恥ずかしい…。
後ろを振り向と副部長さんが悪戯っ子の目をしていた。
「鍛錬(たんれん)が足りませんね。」「つん!」
と、今度は横っ腹が指で突かれた。
「ぎゃん。」
また出た…。今度は小南先輩だ…。それを合図の様にあちこちから、突かれた。
突かれ、
「ぎゃいん。」
また、突かれ、
「ぎゃうん。」
またまた、突かれ、
「ぎゃんん。」
変な声が出た。
きっと、『私は、もう死んでいる。』に違いない。
「それくらいにして、練習しましょう。」
部長さんが止めてくれたけど。もう少し早く止めてくれても…。
「日向さん。」
「はい…。」
「気配を感じ、空気の流れ読み、音を聞く…。他にも、匂いを嗅ぐ。色々な方法で相手を知る。重要な事ですよ。」
「なるほど。そうなんですね。」
そうだったのか!
「昔、凄腕の女性パイロットが『装甲越しに敵の気配を感じろ!』って言ってました。装甲越しじゃ無いにしても、常に周囲に気を配るのです。」
「やってみます。」
後では、小南が美星に
「あの台詞だよね。」
「間違いないです。」
と、確認をとっていた。
「日向さん。今日はどうしますか?」
「出来れば、武装の組み合わせを色々とやってみたいのですが…。」
「そうですね。そろそろ幾つかの武装の組み合わせのパターンを作っておいた方が良いかもしれませんね。」
「借りて帰ったファイルにあった、先端に二本の角が付いた中型のシールドが気になってます!」
「目の付け所が良いですね。ちなみに、そのシールドと相性が良いのは、大口径の両手持ちキャノン砲ですよ。」
部長さんは、左手に装備されていると仮定されるシールドを地面に刺す仕草をしながら、
「シールドを地面に刺す。」
今度は両手を使って大型キャノン砲を扱う仕草、
「キャノン砲を乗せ、安定させてから撃つ!」
撃つ仕草から反動で下がるところまで再現した。
「おーっ。カッコイイですね。」
「でしょ。」
と、笑顔。
またも、小南と美星、
「アレだよね。」
「アレですね。」
繰り返される確認作業。
「でも、アレって出来るんだっけ?」
「バージョンアップで、出来る様になったはずです。装備のスロットを一つ使いますが。」
「へー。そうなんだ。」
小南が納得したとした返事は棒読みだった。
「では、日向さんは美星さんと武装の組み合わせを試してみてください。」
「はい。」
と、私。
「部長。」
美星先輩は、質問のようだった。
「何でしょう?」
「組み合わせはどこまでやります?」
「オーバーウェイトも解禁しましょうか。」
「解りました。」
知らない用語だ。オーバーは超えるとかだったはず。ウェイトは重さだっけ?
何かは、解らないけど楽しみだ。
「他の人は、AIレベルを[エース]で実践形式でやります。」
「[エース]ですか、腕がなります。」
副部長さんが燃えている。
「使うのは、八束(はつか)さんが用意してくれたAIで[エース]と言っても、[スーパーエース]クラスです。」
「げっ…。八束バージョンか…。」
小南先輩が、少し嫌そうに言った。
「相手にとって不足無し。って事ですよ。」
百地先輩が小南先輩の陰から出てきた。いつの間に、そんな所に移動したんだろう。
それにしても、八束先輩が気になる…。いつ会えるかな?
「各自、開始。」
部長さんが『ポン』と手を叩くと、皆が移動した。
「では、組み合わせやりましょうか。」
タブレットを持って来た美星先輩。
ファイルを出して、捲る私。
「機体は【リョウサン】で良いですか?」
「はい。【リョウサン】でいきます。」
タブレットを操作する美星先輩。
「今のシールドから、この中型のシールドに変更しようと思うのですが。」
「では、今までの装備を一旦行ってから、シールドを変更しますね。」
タブレットを操作してから、見せてくれる。そこには、今までの装備からシールドが変更された【リョウサン】が映し出されていた。
「シールドの変更で、軽い装備ならセットできますよ。」
「そうなんですね。じゃあ、何かないかな?」
ファイルを捲りながら、ふと思い出した。百地先輩の使っている機体にあった手投弾。
「手投弾セットできます?」
「種類にもよりますが、四個ぐらいならいけるはずです。」
美星先輩がファイルを探して見せてくれた。
「どれにしようかな…。」
ケーキ屋で選んでいるみたいだけど…。選んでいるのは…。
「簡単に説明すると、『時限式』『接触式』『近接式』になりますね。特種なのは『近接式』で、範囲内に入ると作動します。」
何処かで見たような…。って、百地先輩が使ってた奴そのままじゃん。
「百地先輩の使ってたのは『近接式』だったんですね。」
「そうです。」
どれにしようかな…。
『接触式』は、何かに当てれば爆発すると…。ポィっと投げる感じかな?
『時限式』は、投げて少しして爆発か…。
『近接式』は、近付くと爆発…。ん?
「あの、『近接式』って…。近付いた機体に関係なく爆発ですか?」
「そうです。仕掛けた本人の機体でも爆発します。」
「やっぱり…。」
「仕掛けた以外の機体にだけもありますが、重いので一個になりますね。」
少し考えて、
「『接触式』と『時限式』を二個ずつお願いします。」
「後は、何かありますか?」
「とりあえず、変更はそれだけで。」
「では、S −2に登録します。」
「お願いします。」
タブレットを暫く操作して、セットの登録完了を見せてくれた。
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