第42話 出た

「あれは!」

 人混みの向こうに大尉さんと波門さんを見付けた。偉いぞ私!


 早る気持ちが、私を駆け出させる。

「貴方!」

 ビクッ! 体がトゲトゲになった。


 恐る恐る振り向くと、腕組みした桃河さんが仁王立ちしてた。

「葵さん。一人だけ大尉に取り入ろうとするなんて。そんな事させませんわ!」

「そ、そんな…。」

「お黙りなさい! 言い訳は許しません!」

 あたふた、あたふた。ど、どうしよう。

「私(わたくし)には、葵さんの行動は全てまるっとお見通しですわ!」

 気のせいか桃河さんが大きく見える…。右手の甲を左頬に当て、

「お~ほほ!」

 この笑い方をする時のポーズはお約束。


 って、笑い声と共に桃河さんが、大きくなってる!

 どんどん大きく…。

 もう、完全に見下されているよぉ…。


「お〜ほほ!」

「はっ!」

 笑い声が後ろからもする。


 振り向くと、そこにも桃河さん!?

「お~ほほ!」

「お~ほほ!」

 今度は左右から…。やっぱり桃河さんいる!


 キョロキョロ。よ、四人の桃河さん!?


 う、動いてる!

 私の周りをグルグル回ってる…。


「お~ほほ!」

「お~ほほ!」

「お~ほほ!」


 声が反響しまくってるよ!

「ゆ、許してぇ…。」


「はっ!」

 ゆ、夢か…。

「桃河さん。私の夢にまで。」

 桃河さんを思い出し。

「昨日は楽しかったな。」

 ポツリと呟いてた。

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