第16話 修行

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 そうそう、実戦入ってから副部長さんが、ランニング用の古タイヤを見付けて来てくれた。あのデカい古タイヤは使わなくていいみたい。

 喜んで良いのかなって、思ったていたんだけど…。


 タイヤに付けたロープを、部長さんが腰に縛った。

 まあ、これならって思って、ランニングに出ようとしたら

「待って、まだよ。」

 今度は背中から肩にロープが回り、腰のロープに固定された。

「離すね。」

 小南先輩、離すって何?


 直ぐに解ったけどぉ! 背中に、ズシリと重いものが。バランスを崩して、尻餅を付きそうになったけど、なんとか耐えた。

「これは?」

 思わず部長さんに聞いた。

「これはですね。昔、仙人と呼ばれた、それはそれは、えろ〜い武術家が弟子を鍛えるためにやっていた修行です。」

 えろい!? 偉いじゃなくて…、

「本当は、大きくて重い甲羅を背負って日常を過ごすってことなのですが、そこまではできないのでランニング中だけでもと。」

 部長さんはにこやかに言った。

「そ、そうなんですね。」

 ちょっと、思い当たる事があった。他の部員さんが、私に目線を合わせない事が、同じく事を考えていると解らせた。


「行ってらっしゃい。」

 部長さんを筆頭に部員全員で見送ってくれた。


 その日から、私のタイヤを背負ったランニングが始まった。

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