異世界転生士
向風歩夢
第1話 真白な目覚め
「気づいたかね?」
なんだ?
ここはどこだ?
深いまどろみから覚醒する。まだ視界はぼやけている。
「気づいたならば質問に答えてもらおう。自分の名前を覚えているか?」
「うん……?」
だんだんと視界がはっきりしてきた……
「何だこりゃ……?」
俺はようやく自分がいる場所をはっきり認識した。そこには建物も地面も空も……何もない……
ただただまっ白い空間が縦横無尽に続いていた……
「質問に答えたまえ……自分が何者か覚えていないか?」
声がする方に視線を向けると、そこには複数人の男たちが、俺に視線を向けていた。喋りかけているのは中央に陣取っている男だ……
「答えたまえ……自分が何者か覚えているか?」
なんだ、こいつは……? 随分と偉そうに喋るじゃないか。
「失礼じゃないですか? その威圧的な態度……何様か知りませんけど初対面の人間に話しかける姿勢とは思えない……」
「第七十五転生士(てんせいし)様に対して無礼だぞ。貴様こそ反抗的な言葉を口にするな。慎め」
喋りかけた男の右隣にいる奴が俺に注意してきた。
「ははは! 別に構わんよ第三四九八転生士殿。久しぶりだな、この白界に口答えする元気のある魂が来たのは……」
何を話しているんだ、こいつらは……魂……だと?
何かの宗教団体か何かか?
そう言えばよく見ると、こいつらの服装は何だ?
いつかテレビで見た古代ギリシャかなんかの兵士の鎧を着ている……コスプレか?
「おっと、それでは私の自己紹介をさせてもらおうかな……といっても私に名前はない……いや、忘れてしまったと言って良い。皆からは第七十五と呼ばれている。この白界第六百一エリアの指揮者を命ぜられている者だ」
いきなり電波か中二病みたいなことをのたまいやがって……どうやらこいつはこの男どものリーダーらしい。鎧の甲に赤い布の装飾が施されている。
「第七十五さんと言うんですか……生憎ですが、僕にはあなたたちみたいな電波コスプレ集団と付き合う暇はないんですよ。帰らせてもらいますね……」
「ふむ……帰る、ね…… 君、そうは言っているがどこに帰ると言うんだね?」
「そりゃもちろん……」
あれ、なんだ、俺はどこに帰らなければならないんだったっけ?
俺には帰りたい場所があった。どんな手段を使ってでも戻りたい場所だったはずだ。それだけは覚えている、心に刻まれている。
「さて、ではもう一度問おう。自分が何者か覚えているか?」
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