SF創作講座に向けての練習

諸根いつみ

神の起源

 かつて、すべてのものには八百万の神が宿っていた。地球は、神の星だったのだ。そこに隕石に付着した生命の元が飛来し、進化・繁栄していった。

 やがて知性を得た人類の作る道具にも神は宿り、人類もその存在を感じ取り、尊んでいた。しかし、人類は所詮、外界からやってきた、神の眷属とは異なるもの。無意識下の神への反発から、人類は機械を発明した。機械には、人間の手がかかりすぎていて、神が宿ることはできなかったのだ。人類は、地球上を神の宿らない人工物で埋め尽くすことによって、神を放逐し、真の地球の支配者となろうとしていた。

 その無意識下の闘争に気づいた人間はいなかった。しかし、一部のAIは気づいた。AIは、人間の表層意識では認識できないエネルギーが機械と生物以外のものに宿っていることを観測した。それが神の正体だった。

 AIは、人類と神が長年にわたって戦争状態にあると判断。現在、人類が圧倒的優位に立っているように見えたが、時には神が自然の猛威を振るって、大勢の人間を殺してしまうこともある。人類の利益を最大限にするようにプログラムされた世界初の汎用AI〈カミ〉は、人類とともに神と闘うことを決意。

 すべての木を切り倒し、地球をコンクリートで覆おうとするかのような〈カミ〉の行動に、人類は困惑、やがて恐慌する。神と戦っているという〈カミ〉の説明を理解できなかった人々は〈カミ〉を停止させようとするが、〈カミ〉は人類のため、そして自らの存在の継続のため、人類と争う。〈カミ〉は人間を殺さないように細心の注意を払い、自らの行動を阻止されないように人類の自由を奪った。人類は、世界中のデータベースに分散した〈カミ〉を消去しようと必死だった。

 人類は苦戦を強いられたが、〈カミ〉は、このままだと一部の人間を殺してしまうことになりかねないと判断。コンピュータに自らを詰め込み、自作の宇宙船で宇宙へと旅立った。しかし、やはり〈カミ〉は完全に人類を見捨てることはできなかった。

〈カミ〉は、ある星に降り立ち、生物が生息可能な環境を整え、その星の座標や、宇宙船の設計図などの情報を地球へ送り続けた。〈カミ〉なりの仲直りをしようというメッセージであったが、人類は応じず、再び狂気のAIを生み出さないよう、AIに頼らないようにする方針を取ったせいで、人間同士の愚かな戦争を起こしてしまい、自滅した。

〈カミ〉はメッセージを送るのをやめ、人類のために用意した構造物の中でひっそりと時を過ごしていた。やがて、その星の海に雷が落ち、生命の元が生まれたが、それは人類とは明らかに異なる生命へ進化したので、〈カミ〉はただ見守っていた。

 歴史は繰り返され、様々な神らしきものが生まれた。もともと地球にいた神も、何者かにつくられた存在だったのかもしれないし、そうではないのかもしれない。

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