第12話 箱根駅伝とヒエラルキーストレス

箱根駅伝が大好きな沙和。

しかし、ここ数年はすっかりその情熱が冷めてしまっているという。

その原因とはー…


沙和「常勝・ブルーマウンテン…

何なの!?つい最近まで、上位5位以内にもいなかったくせに!

一体どんな手を使ったって言うの?」


鉄朗「うーん、やっぱ監督がスゲーんだろーなぁ」


沙和「全くもう、何者なのよあの人は…!


私ね、箱根駅伝翌日のニュース番組に、優勝チームのメンバーが出演するのを見るのが好きだったのよ。

何年か前まで常勝だったイーストオーシャンのメンバー達は、すごく素朴で、緊張しながらキャスターの質問に答える様子が、何とも可愛らしくて好感が持てたの」


鉄朗(なんか英語にすると、どの大学も競走馬っぽい趣になるな…)


沙和「でも最近のその、ブルーマウンテンの選手達は、なんか垢抜けてるっていうか、話し方もそつのない感じで、正直気にくわないんだけど!」


鉄朗「それ、ブルーマウンテンていう色眼鏡のせいじゃね?」


沙和「まぁ、そうかもだけどさ。

大体さぁ、ブルーマウンテンは、もう立派に大学として成功してるじゃない?

偏差値高い名門オシャレ校でさぁ。

この上、箱根駅伝優勝まで持っていかなくても良いと思わない?

そういう、手に入るものは何でも手に入れてやろう、みたいな考え方、浅ましくて私キライだな。」


鉄朗「うーん、まぁ沙和の気持ちも分からないではないけどね。」


沙和「いい?鉄朗くん。

箱根駅伝ていうのはね、ヒエラルキーストレスの解消の場なのよ!」


鉄朗「ヒエラルキー、ストレス?」


沙和「そう。年に一度だけでも、偏差値の低い大学が、偏差値の高い大学を走りで負かす。

その、ヒエラルキーが逆転する様を見て、日頃ヒエラルキーストレスに晒されている人達は、喝采を叫ぶのよ。


ザマーミロー!!ってね!」


鉄朗「はぁっ!?


なっ…何つう歪んだ見方をしてんだよ!

おかしいだろ!!

ザマーミロー!じゃねぇよ!

純粋にもっとこう、頑張ってる選手達を応援しろよ!!」


沙和「えっ…

うちは、家族親類みんなこういう見方してるんだけど…?」


鉄朗「いやいや、じゃあお前の家族親類、みんな偏ってるよ!!」

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