魔王の我が勇者の息子に転生だと!?

エミヤ

魔王は死にました

「これで終わりだ、魔王!」

「ぐ……ッ!」

 勇者の聖剣が魔物の王たる我の胸を貫くと同時に、思わず苦悶の声を漏らしてしまった。

「やったわ! ついに魔王を倒したわ!」

「ああ、俺たち遂にやったんだな!」

 勇者の仲間たちの口から、喜びの言葉がもたらされる。

「見事だ、勇者よ。まさか、五百年の時を生きる我を殺すとはな」

 突き刺さった聖剣が我の血肉と魂を浄化していく痛みに耐えながら、眼前の少年を称賛する。

「俺だけの力じゃない。仲間がいたから勝てたんだ」

「仲間……なるほど、勝てぬわけだ」

 魔王としてたくさんの配下を従えていたが、仲間と呼べる存在はいなかった。

 強すぎる力を持つ我と共に並び立つことのできる者が存在しなかったためだ。

 それを嘆いたことはない。むしろ、絶対的な力を持つ魔の王として、配下の者共を導いやろうと張り切った。

 だが、結果はご覧の通り。我は聖剣に身体を貫かれ、この命は幾ばくもない。

「仲間を作らなかったこと……それが我の敗因だったということか。何ともマヌケな話だ」

 きっと、我は生き方を間違えたのだろう。

 もし仲間がいればこんなことにはなっていなかったかもしれない。

「未練だな」

 今更な後悔に、我は苦笑を浮かべてしまう。

「もう逝くとしよう」

 すでに身体から力は抜け、瞼も重い。

「もし二度目の生があるならば再び会おう、勇者よ」

 その言葉を最後に、我――魔王べリアルは永劫の眠りについた。

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