第16話 ボス部屋突入
小休止の後、余ったスケルトンを引き連れて、ボス部屋の前に立つ。中はうかがえないけれど、節目となる十階なので相当な激戦になることが予想される。
『それはありマセン。かなりのハイペースでここまで来ましたし、使ったのは低級の召喚魔法だけデス。前回のスケルトンコングほどのモノが出てくることはあり得マセンよ』
「えー、シリアスな雰囲気出したかったのにな。いや待てよ。スケルトンコングがそんなに強いなら、それだけの魔力をいったいどこから……」
『私の異世界転移魔法もろもろだと言ったはずデスが。センパイは私をいじめるのがお好きなんデスか?』
「ごめんごめん、そんなつもりはないんだ。ど忘れしてたよ。でも、召喚魔法も転移魔法の一種じゃないのかな。低級とはいえ、あっちからこっちへ移動するのって、かなりエネルギーを使う気がするんだけど」
『モンスターとセンパイは違いますし、何より世界の壁を越える必要のある異世界転移は、魔力の消費量が桁違いなんデスよ。それに様々な条件がありますし、気軽に何度も使えるものではないのデス』
昨日もそんなことを聞いた気がする。色々なことが一気にありすぎて、記憶の片隅に追いやっていたみたいだ。ちょっと反省する。
「じゃあ改めて、ボスをさくっと倒して、この階層を僕らのものにしよう」
六つのカギを使うと、大きな扉がゆっくりと開き始めた。扉の隙間から、奥に見たことないタイプのスケルトンがいるのがわかった。
部屋に入ると、扉が音を立ててしまった。戦闘開始だな。
『スケルトンメイジのようデスね。ソルジャーの魔術師版といったレベルデス。魔法に気をつければ、問題はないデショう』
「モンスターを喚ぶ必要もなさそうだね。ちょっとがっかり、」
話している途中で、天井から何か大きなものが落ちてきた。それは人間大の氷の塊で、中にはメタリックな外殻の人形が入っていた。
「な、何あれ」
『ドール系のモンスターのようデス。スケルトン以上にカスタマイズがきき、同種でも性能が大きく変わりマス。ですが、あんなものを喚び出す魔力は無かったはずデスが』
驚いていると、いきなり氷の塊が燃え上がった。
混乱しかけたが、スケルトンメイジが杖を構えていたのが見えて納得した。あいつの魔法だ。でもどうして……、そうか!
「ピセル、スケルトンメイジを攻撃しろ!」
『は、ハイ!』
ピセルが羽ばたき、光がスケルトンメイジを砕いた。
これで向こうは大丈夫だけど、まだ本命が残っている。
スケルトンメイジが放った炎はドールを覆っていた氷を上半分ほど溶かしていた。上半身が露出したドールは動き出し、残った氷を砕いていく。
『避けられないならただのかかしデスね。そのまま壊れてくだサイ!』
ピセルが魔法を当てるが、少しのけぞったくらいで、また氷を砕く作業にもどっていた。
『なんデスって!?』
ウィンドウ展開、モンスターショップを開く。
検索。ドール、魔法耐性強。
出てきた結果と見比べると、あいつの正体がわかった。
ミスリルドール・マジカルコーティング。体の光具合と、魔法耐性から見て間違いないだろう。
『ありえマセン。あんなものを喚び出せるほどの魔力を、私たちは放出していマセン』
「でも目の前にいる。今考えるべきなのは、あいつの倒し方だろ」
ミスリルドールは、攻撃力、防御力ともに高い中堅モンスター。低レベルの僕にとっては、絶対に戦ってはいけないレベルのボスのようだ。
今あるMで買えるモンスターは低級上位がせいぜい。普通の方法じゃあ勝てないだろう。
「僕の余った魔力をMに変換する。それで足りるはずだ」
『何を喚び出すつもりデスか?生半可なモンスターでは、ダメージは通りマセンよ。私の魔力も使うべきデハ?』
「生半可ならね。だからここは、攻撃力特化のコイツでいく!ピセルの魔力はまだ残しておいて」
貯めたMのほぼ全てをつぎ込み、モンスターを購入する。すぐさま召還すれば、足下に二つの魔方陣が輝いた。
「来い!魔術式鋼鉄砲台【マギアキャノン】!」
マギアキャノンかつて空からドラクリア大陸を支配していた天空城。それを打ち破るために開発された飛空戦艦に搭載された魔術式砲台のモンスター。(説明文ママ)
固定砲台のため移動力0。素早さ極低、防御力それなり、そして攻撃力がバカ高い、ロマンあふれる姿が現れた。
そして並んで現れたのは、強硬鉄鋼虫【キャノンボール・ビートル】。
大きさはソフトボールくらいだが、堅さと重さは砲丸玉以上だ。
マギアキャノンとともに造り出されたモンスターらしく、相性は当然ばっちり。今も自分から、マギアキャノンの装填口に入っていく。
狙いはミスリルドールの心臓部。まだ腰の下まで氷漬けなので、あせらず照準を合わせる。
「よし、マギアキャノン、発射用意!」
『各種回路オールグリーン。魔力充填開始しマス。20%、30%』
ピセルがマギアキャノンへ魔力を注ぎ込む。マギアキャノンの回路に光がめぐり、低いうなりを発している。
『50%、60%、70%』
ミスリルドールが、膝まで氷を砕いた。もう拘束はほとんど解けかけている。思ったよりもギリギリで焦る。
もう魔力のほとんどを使ってしまったんだ。これを外したら、打つ手はもうないぞ。
『80%、90%、魔力充填100%完了。いつでも撃てマス!』
間一髪で間に合った。狙いよし。あとは撃つだけだ。
「よし、これで終わりだ。マギアキャノン、
『
ボス部屋に轟音がひびく。
衝撃を感じるほどの音とともに、キャノンボール・ビートルが撃ち出された。
耳がキーンと鳴っている。衝撃で僕が倒れそうになった。大砲の近くにいるんじゃなかった。
ピセルが転がっていたので、拾い上げる。目を回しているだけのようで、ちゃんと生きてる。
ミスリルドールを見れば、固定された足だけが残っている。腰より上はバラバラになってそこらじゅうに散らばっている。
キャノンボール・ビートルは壁にめり込んでいた。と思ったら、自力で壁から這い出てきた。頑丈すぎだろ。
『なんというオーバーキルでショウか。威力100%を出す必要はなかったかもしれマセンね』
「本当に倒せるかどうか分からなかったし、全力でよかったよ。これで十階より上が僕らのものだ」
『そうデスね。今は無事だったことを喜びまショウ』
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