第11話 モンスターショップ
魔力ショップ、バージョンモンスター販売所。これがダンジョンを攻略するカギになるのだろうか。
ショップの項目に【←NEW!】の注釈つきで増えていたそれを開くと、他のショップと同様にずらりとリストが並んでいた。
写真も見れるようになっていて、どんな見た目なのかが一目でわかる親切設計だ。
「思ってたよりもたくさんいるね。僕らが買えるモンスターの中で一番高いのは……リザードベビー、かな?強そうには見えないけど」
『弱いデスよ。基本的にベビーとつくものは、時間と取得経験値によって成長するタイプデス。将来性がある分、初期であるベビーはとても弱いデス』
大器晩成型ってことか。
だとするとこのリストには、買える範囲で強そうなモンスターが存在しない。
ベビーどころかエッグとついた名前もあり、これを買っても卵が一個転がるだけなのは想像に難くない。
ベビーじゃないのは、ネコやウサギなどの小動物系だ。
ペットのような小動物系は派生が多く、さらに毛並みや模様まで選べるようになっている。同じモンスターでも住む地域が違うだけで、見た目がかなり変わるらしい。
面白いのがネズミ系で、主食となる食べ物が偏っているものがいた。
石を食べるロックイーターに、木を食べるハウスイーター。骨を食べるボーンイーターなんてものまでいる。
モンスターによって特色が違いすぎて、このリストを見ているだけでも楽しい。
犬がいないか探したが、どれもベビーが付いているうえに、もうちょっと魔力を貯めないと買えそうも無い。ヘルハウンドベビーとか買いたい、超飼いたい。
『センパイは犬好きなんデスか?』
「犬は好きだよ。ネコも好きだけど、ウチは親がアレルギー持ってるから飼えないんだよね。しかもペット禁止だから、どちらにしろ飼えなくてさ。金魚はOKだったから飼ってるけど、やっぱり犬がいいんだよね」
検索機能を見つけたので、それを使って犬系のモンスターを並べてみる。どの犬もかわいいが、ほぼ全てがレベルが上がるにつれてどんどん大きくなっていくようだ。30レベルで大型バスくらいの大きさになるし、伝説級になると山くらいの大きくなるらしい。これはさすがにダンジョンには入りきらないだろう。
『私はこれがカワイイと思いマス』
「キングポメラギオン。全長5メートル。犬種モンスターとしては小柄だが、その凶暴性は抜きんでて高く、主人にさえ牙をむくこともある。格上にも臆さず立ち向かい、幾多の
『どうデス?カワイイうえにロマンもありマスよ』
「買いません」
即答する。
「鳥系もけっこういるけど、ここじゃあ役に立たないかな。ピセルみたいなハトのモンスターもいるんだね」
『モンスターとひとくちに言ってモ、神聖なものも俗物なものもいマス。どんなモノであれ、使い方次第で天使にも悪魔にもなるのデスよ』
そう胸を張る。
そういえばピセルは天使なんだっけか。気安く話せているせいで、そんなスゴイものには全然見えない。
「じゃあ本格的に選ぶとしようか。このリザードベビーだけど、成長するのにどのくらい時間がかかるか分かる?」
『リザード系は成長が早いので、エサが十分あれば七日ほどかト。成長後の戦力としては一般的な兵士一人分くらいで、囲まれると格下にも容易に負けてしまいマス』
「弱いんだね」
『成長後に
「じゃあこっちの虫のモンスターはどうだろう。買えるだけ買ってさらに増やせば、物量で押し切れないだろうか」
『数がいても、レベル差によってダメージが引かれるので、期待はできないデス。なにより食べ物が不足してマス。私の持ってきた食料では、とうてい賄いきれマセン』
つまり、食料はこっちでなんとか調達しなきゃダメってことか。これは辛い。すぐに買える範囲のモンスターでは、戦力になりそうなモンスターが思いつかない。
「だとしたら、他に考えられる戦法としては、スケルトンでチームを組むのどうだろう」
『チームですカ?』
「そう、色んな種類のスケルトンを呼んで、状況に応じて編成を変えながら戦うんだ」
強い仲間がいないなら、柔軟性を持たせることで対応力の高めるのが狙いだ。相性が良ければ格上にだって負けはしないだろう。
『とてもいい方法だと思いますが、残念ながら、このダンジョンでは使えないでショウ。ここはボス特化型なので、並のスケルトンではあっという間にヤラレてしまいマス』
「ああ、そうだった!でもそうしたら八方ふさがりじゃないか。このショップがダンジョン攻略の決め手になるんじゃ……」
なかったのかよと言いかけた時、部屋の外から音が聞こえた。
入り口を振り返れば、ボロい扉が開いていくのが見えた。暗い廊下を、魔法の光が照らし出す。
そこに立っていたのは、人形のように可憐な少女だった。
長い輝くような金、陶器のような白い肌、細かい刺繍の入ったフリフリのドレス。とても高貴な気配を漂わせた少女が、光の中で微笑んだ。
「ごきげんよう魔術師さん」
突然の高貴な来客の登場に、言葉が何も出てこない。指一本どころか、舌までも固まったように動かせない。
『センパイ、落ち着いてくだサイ。いくらごきげんようって言われたからって、ここは女学院とかじゃないんですカラね!興奮して騒がないでくだサイね』
誰も興奮なんてしていない。むしろピセルの言葉が失礼に当たらないか心配だ。あの少女の様子じゃ、貴族のご令嬢どころか王女様だと言われても信じられる。
『おそらく本当に王女様デスよ。私の調べによれば……』
「初めまして、わたくしは、【霧出す森の国】フォレスター王国の第三王女、ミステミスと申します。よろしくお願いしますわ」
今度はスカートをつまんで、映画で見たような上品なおじぎをした。
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