天狗が狐に恋をした。

涼井 菜千

一 はじまり

 ここは人々の平均寿命が千年となった世界。

 とある国、星霜せいそうの中心都市である京洛けいらくには、織治野おりじの学園がくえんという学校があった。


 現世でいうところの高校に当たるこの学園には、入学に関するしきたりが存在していた。

 として、この世界で生まれ育った純血シュエであることを前提として、学園の指定する能力を持っているか、由緒ある家系の出身であるか、のどちらかであることを満たした者しか入学することを許されない。



 この国では元来、非能力持ちリーフェン能力持ちユリシェンの2種類の人間がいた。非能力持ちリーフェン能力持ちユリシェンを避け、反対に能力持ちユリシェン非能力持ちリーフェンを襲った。

 非能力持ちリーフェン能力持ちユリシェンの中にも、純血シュエ混血ウェイシェがあり、この国の98%は純血シュエである。


 四五〇年前、今では学園が建っているこの地では、たった一人の人間によって能力持ちユリシェンを非科学的存在として忌み嫌い、能力持ちユリシェンの排除が行われた。

 これにより、当時この世界を統治していた三人の神は、一人となり、平穏を取り戻した。

 


 そして今年もここ織治野学園では、例年通りの入学式が行われ、“非能力持ちリーフェン能力持ちユリシェンの融合”という校風の元、新入生が入学した。


 そう、全てはこのとき、悠依がこの学園に入学したときから決まっていたのかもしれない。


 四五〇年前の因縁の相手が悠依の目の前に現れたことも、偶然ではなく、“必然”だったのかもしれない。

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