第19話
「ああ、やっぱり。分家が黒から子を招いたって聞いてたけど、この学園の生徒だったのね」
ミュゲはアベリアの方を向いてそう言い放った。
「え、あ……ご存知で?」
彼はあからさまな動揺を表にする。
「有名だから。なんでも真っ白い翼を持った子を拾ったとかで噂に」
「本当ですか……そんな目立ち方してると思わなかった……」
「無理もありませんね、あまり社交界にも顔を出されませんし」
「うちの父はああ言った場所が苦手ですから」
アベリアは気まずそうに苦笑いをこぼしながら椅子に座る。
「で? 本家のお嬢様がこんなところで何を?」
「そこの生徒会長様に呼び出されたもので」
「は? いやいやいや。だから、あれほど餌を与えるなって言ってるよね?! 密会なら学外でやってよ……」
「仕方ないだろ。ここが一番人目につかないんだから」
「そりゃあ? 盗聴も盗撮も侵入もできないようになってるけどね? ここに来る道中が目立つんだって。自分が思ってる以上に目立ってること自覚して。お願いだから」
「ならもう勝手に言わせておけばいいだろ。どうせでまかせなんだから」
「そうだけどさぁ……」
「私もう帰りますね?」
そう言ってミュゲは立ち上がり扉を押す。
「ああ、また明日」
「彼を庇う訳じゃないですけど、私に用があるなら家に来ていただければ、部屋に案内するようにぐらいは言っておきます」
そう言って彼女が出て行った扉を見つめる。先に沈黙を破ったのは、アベリアだった。
「なあ、そう言う関係なら先に言っておいて欲しいんだけど」
「まさか。研修の為の試験だよ」
「じゃあ、その研修の為の試験って何なんだよ……。アルがブランシュに研修に行きたかったことすら知らなかったんだけど?」
そう言ってアベリアは頬を膨らませる。
「あー……行きたかったと言うか……」
視線を泳がせ、言葉を濁す。出会った頃を思い出すその姿に、アベリアは僅かに体を彼の方へと向ける。
「何かあるのか?」
「……出会ったばかりの頃の事を覚えてるか?」
「出会った頃? 家に来た時のこと? それとも外での事?」
彼の言い方に少し眉を寄せ戻すと、「両方」と答えた。
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