自由気ままな異世界平凡ライフ! …を満喫する筈だったのだが、神よ、これはどういうことだ?
Aya
プロローグ 終わりは突然訪れる
目の前のイチャイチャ高校生カップルを見ながら、俺は彼女のことを思い出していた。
今日は、付き合ってから三年目の記念日だ。
前々からアイツが欲しがっていたプレゼントも買ったし、早く待ち合わせの場所に行こう。
頰が緩み、足取りが軽くなるのを自覚しているが、仕方がない。
最近はいいことずくめだしなぁ。
大学も、苦労の甲斐あって第一志望受かったし、住む場所の目処もたったし。
……だから、あんなことが起こるなんて、想像もしていなかった。
突然、遠くから悲鳴が聞こえてきた。
「おい、避けろ!!」
「いやぁあぁ!」
そちらへ顔を向けると、猛スピードで突っ込んでくるトラックが。
よく見ると、運転手は居眠りしているようだ。
いや、気を失っているのかもしれない。
いずれにせよ、トラックは真っ直ぐ、高校生カップルへと突っ込んで行っている。
肝心な二人は、恐怖で足が竦んで動けないみたいだ。
「あ、危ねぇ!!」
助けようと思ったわけじゃない。
体が勝手に、動いたんだ。
…俺は、そんな殊勝な人間じゃなかった筈なんだけどな。
驚いているカップルを渾身の力を込めて突き飛ばした瞬間、俺の全身に凄まじい衝撃が加わった。
バキバキと骨が折れる音が聞こえ、口からは冗談みたいに血が噴き出していた。
多分、全身の骨は逝ったし、内臓も潰れた。
死んだな、俺。
俺は最期の気力を振り絞って、カップルを見た。
…どうやら、無事みたいだ。
それだけはよかった。
トラック運転手、あんたのこと恨んでるからな。
カップル、折角助けたんだから、精々幸せに暮らせよ、俺の代わりに。
血溜まりの中には、渡す筈だったプレゼントの箱がある。
…渡したかったな、アイツに。
遠くから聞こえるサイレンの音を聞きながら、俺の意識は完全に潰えてしまった––…。
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