第6話
僕たちが、いや、もう「僕たち」という言い方はやめよう。僕が驚嘆したのは翌日も彼女がそのランドセルを背負って登校してきたことだった。その翌日も、その翌々日も彼女は傷つけられたランドセルを背負って登校してきた。隠す様子もなければ、見せつける様子もない。ただ、いつも通りだった。彼女の目には映っていないかのようで、そのままあの出来事さえもなかったことに出来るのではないかと思ってしまうほどに。しかしそんなはずはなく、担任の先生が気づいたのは事件の翌週だった。どうやら土日に彼女の親御さんから電話が入ったらしい。一時間目の授業は急遽「道徳」に振り替えられ、ことの顛末を聞き出す時間となった。当事者は語らない。彼女も含めて。直接事件に関わらなかった者たちの記憶と私情と体裁だけで時間は進んだ。そのうちの一人の口から僕の名前が挙がった。否定はしなかった。
放課後、担任に呼び出される。彼女もいた。彼女の親がいなかったことにほっとしたのは正直な気持ちだった。
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