第35話 ラビちゃん先輩のいない日(※上谷真悟SIDE)
ラビちゃん先輩が王女様の護衛としてしばらく王都からいなくなる。
その知らせを聞いた皆は歓喜の雄叫びをあげた。
が、しかし、やってきた女騎士とカディス師匠に寄り、さらなる鍛錬地獄が待っていたのである。
魔法だけは教える人がいないということでそのすべてが脳筋指導になってしまったから、冒険者依頼に出かけることが息抜きになるとは、みんな思っていなかった。
というわけで今は王都の森にいる。Dランクの魔物討伐だ。猿に似た魔物で狡猾で逃げ隠れするのが上手く群れる。一匹一匹はEランクだが、群れることによって脅威度が上がるのだ。
迷宮討伐メンバーで来ている。俺達ガッキ―チームと女の子チームだ。
今は一休みの最中だ。まだ目的の魔物は索敵に引っかかってはいない。
「そういえばさ、あの危ない奴ら、何やってんだろ。訓練所通りかかった時ちらっとのぞいてみたけど、なんか遊んでるみたいだったぞ?ラビちゃん先輩に一回扱かれればいいのに。」
ハジメが文句を言い始めた。追い出されたの、根に持ってた。
「なあ、俺思うんだけどさ、ラビちゃん先輩って俺らの中でも規格外じゃね?」
俺はふと、思ってた疑問を口にした。
「規格外は規格外だな。魔法も剣も腕が立つし。顔もいいし、性格は…ひと癖あるけど、基本真面目そうだな。」
ガッキ―が真面目ぶって言った。
「そうそう、真面目で意外と誠実だよな。しかもオタク。」
俺は頷いた。ある時話しに出てきた情報に驚いたことは忘れてない。
「そう!オタクだったんだよなー。真面目な顔で30歳になってないけど魔法使えるっていいだした時は心の中で噴いたわ。」
ハジメが乗ってきた。そのどこに噴くんだろう?30歳と魔法使いの関連性はなんだろう?
「俺は夏と冬にあるおっきなイベントに出てたって聞いた。」
ガッキ―がぼそりと爆弾を投下した。所謂オタクの祭典である。
「え、マジ!?俺行ってみたい…」
ハジメ、お前ってオタクだったっけ?
「話が逸れてるぞ!勇者がこの中から出るって言われてもさ、どう見てもラビちゃん先輩っぽくない?」
俺は話に軌道修正をかける。
「ラビちゃん先輩は違うっていってるけどなあ…」
ハジメはほんとにそう思っているような口ぶりだ。
「えーでもそうしたらラビちゃん先輩より強い人ってことだろ?いる?あっちの先発組の中でいそうになかったじゃん」
俺はつい反論する。あの強さってほんと勇者クラスだよ。
「そうだよなーあの危ない奴があの魔法で幅利かせてるんだったら、ラビちゃん先輩に敵うわけないしなあ」
ハジメも頷く。
「だよな。炎出せてもそれがどうしたってレベルだったよな。俺達に防げる時点でだめだよ。」
魔法についてはうるさいガッキ―はあの時の事、そう思ってたのか―という発言をする。
「あっちで失敗したから俺達の方でやり方変えたんじゃないか?」
水筒を口にしながらハジメが言う。
「んー、そうなのかな?違うような気もするけど。」
眉を寄せてガッキ―が唸った。
「もしかしてさ、ラビちゃん先輩がここの先生じゃね?」
俺は今さら言えないようなことを言ってみた。
「…今さら何言ってんだ?しんちゃん…どう見てもここを仕切ってるのはラビちゃん先輩だろうが?」
ハジメが突っ込んできた。うん。言われると思ったよ。
「だよな。魔法の指導も的確だし。あれだけ魔法使うの覚えるのってこっちに来てからだろ?じゃあ、いつ覚えたんだって話だよ。」
俺は肩を竦めて頷いた。
「そういえば、俺、この間ちょっと食事行くの遅くなった時にさ、先発組の1人とたまたま会って話したんだよ。向こうから謝られちゃってさ。確か、リーマンやってた、おじさんでさ。なんか、炎ぶっ放した奴って”炎の賢者”ってスキル持っててあのメンツの中だと攻撃魔法ダントツなんだって。で、同じ大学生くらいの3人となんかつるんでて、偉ぶってるそうだよ?」
ガッキ―が嫌そうな顔で言った。
「うわー最悪、もう、ラビちゃん先輩にガツンとやられて欲しいよな。」
ハジメ、過激だ。
「ラビちゃん先輩は目立ちたくない人だからなあ。あれだよ、影からってのが好きなタイプだろ?しないよ。」
なんだろうな、目立たずチート、っていうのがイメージだ。ガッキ―は正しいと思う。まあ、目立ってないとは言わないけど。
「王女様に危険が及ぶならともかく、だよな。俺もしないと思う。」
と俺も頷いた。あれなんだよな。王女様とラブラブオーラあるんだよな。皆思ってる。
「おーい、もうそろそろ行こうよ。」
僕っ娘、えりりんが言ってきた。皆立ち上がる。
「りょーかい。」
「行こう行こう」
「頑張ろう」
俺達は一斉に言って、索敵をしながら移動を開始する。えりりんが先導だ。
日暮れまであと3時間。目標は10匹の討伐。群れのはずだから見つけられれば、上手くいくはずだ。
えりりんが合図した。群れを見つけたらしい。
この先の大きな木の枝に群れている。
俺は先制の魔法を放つ。“
群れの何匹かは魔法が当たって地面に落ちる。そこをガッキ―が“
残りの魔物が次々とハジメに襲いかかっていく。俺とえりりんはその背中を狙って仕留めていく。
ガッキ―はハジメに風の鎧を展開していた。
全ての魔物を倒して討伐部位を集めてから素材をはぎ取った。残りは”浄化”して土に埋めた。
あと1時間で日が暮れる。全部で12匹の成果に、俺達は満足して王都に戻った。
ギルドで依頼完了の申請をして報酬をもらい、城に戻った。
一旦皆は部屋に戻って食堂で集まることにした。俺達は騎士の食堂で食事させてもらっているんだけど、騎士達とは時間帯が合うのだが、先発組に会わない。不思議だ。
他のメンバーも戻っていて、一つのテーブルで食事することになった。
「しかしさ、ラビちゃん先輩がいないとなんだか調子でない気がするのは、不思議だよねー」
アユが食事が終わりかけた時にそう言った。
「わかる。意外と存在感大きかったんだよね。」
えりりんが頷く。
「あと4日も留守だと、寂しい気がします。」
玲奈がおっとりと言った。
「たしかになあ。でも、だからってサボると恐ろしい気がするからサボれないって怖いよな?」
とハジメがおどけて言う。
「絶対見てそう。千里眼だよ、あれ。」
ガッキ―が言って皆が頷く。
「確かに。時々眼が金色になってるだろ?あれってスキルっぽいよ?」
「どれだけ規格外…」
皆が納得して頷いた。結局、出来る限り頑張って鍛錬に励もうということになった。
皆なんだかんだ言って、ラビちゃん先輩の事は慕ってるし、頼りにしているのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます