第1章ー10 Setting off

少し空気は悪くなったもののその後もダンダリオンの説明は続いた。


「ポラプレスを見つけても、サクレを見つけても一緒だ。サクレを見つけたら捕らえておけばポラプレスとは必ず会う運命にあるそうだ」


ポラプレスとサクレはどこにいても必ず会う運命にある。なのでカオスティアの目的はどっちを見つけても作戦が成功するということだ。しかしティポンはどうその2人を見つけるのか不思議だった。


「でもダンダリオンさんその2人を見つけるにはどうしたらいいんですか?」


「俺たちは人間世界に行きその2人を見つける」


人間世界に行くそれが初めの目的だった。しかしティポンは迷っていた。人間世界に行くということはエキドナを置いて行くということになる。エキドナと別れることとなるそれが嫌だった。


「人間世界にはいつ行くんですか?どうやって行くんですか?」


「そうだな、大事なことを言い忘れていた。この世界と人間世界を繋ぐ通路が125年に1回開かれる…その時に人間世界に旅立つ」


「じゃああと40年ですね…分かりました…」


40年は長いようで悪魔にとってはとても短い時間だった。人間世界に行くとなると危険がつきものになる。あと40年でエキドナと別れなければいけない。いやそうしないといけないそう思った。


「あと一つ人間世界に着いたら俺たちは全員別れて行動する。そして2人のどちらかを捕まえたら仲間に連絡だ。あとなるべく人間には関わらず生きることだ」


「はい…分かりました…」


この任務はあまりにも過酷だとそう確信した。死ぬ可能性も充分に承知した。そうしてその後も説明は続き今日はお開きになった。


「じゃあ今日はここまでお開き」


ティポンは他のカオスティアたちに挨拶をしてダンダリオンに外まで案内して貰った。


「また明日も迎えにいく…修行も怠らず頑張れ」


「はい…分かりました」


一気に緊張がとけ疲れが出てきた。今日は早く帰って寝たいそう思った。しかし気になった事があった。


「あの…すいません…なんでダンダリオンさんはそんな黒いんですか…」


「姿が見えたところで何も変わらない…だからあの時助けたんだよな…似たところがある…」


「姿が見えたところで変わらない…」


ダンダリオンは意味深な事を呟いて後はもう口を開けることはなかった。ティポンもそれ以上は聞いてはいけないそう思った。そうしてる間にもう家に着いていた。ダンダリオンと家のドアの所で別れた。ティポンは家のドアを開ける。


「おかえりなさい」


エキドナは玄関でニッコリしながら心配そうに帰りを待っていた。そんなエキドナを見てティポンはとても嬉しく感じた。しかし、ティポンはエキドナに話さないといけない事がある。


「ただいま…少し話したいことがある…」


エキドナはティポンを見てあまりいい話では無いことに気づいた。分かったと言い2人で席につく。はじめはティポンは喋ることができずシーンとしていた。


「俺は…人間世界に行く」


「えっ……」


急の事で信じることが出来なかった。


「そんなの嫌だ…」


エキドナの両親は人間世界に行き二度と帰ることはなかった。ティポンには人間世界には行って欲しくないそう思った。


「それが仕事なんだ…」


「分かった…じゃあ私も連れて行って…」


エキドナは自分が着いていく事でティポンと離れないですむ、会えなくなることがなくなるそう思い自分も行くことを決めた。


「そんなの無理だ!!お前を連れて行くなんて!!危ないんだぞ…..」


ティポンはエキドナが一緒に来てくれるそう思った時とても嬉しかった。しかし過酷で死ぬ可能性があるのに連れて行くことはどうしてもできないと思ってしまった。


「でも貴方の夢は私の夢でもある!!今まで一緒に夢見てきてここまできて貴方は夢を諦めろって言うの!?」


ティポンは予想外の言葉に返す言葉が見つからなかった。しかし少し考えるとエキドナを連れて行きたいという気持ちに変わった。


「分かった…じゃあ連れていく…絶対にエキドナを守る」


「うん…」


「人間世界に行くのは40年先だ…たくさんの思い出を作ってこの世界と別れを告げよう」


「うん!思い出たくさん作ろう」


そう言ってその日は寝た。

それから年月は流れた。2人の生活はとてもいい生活だった。辛いことも楽しいことも2人で乗り越えた。ティポンは修行をすることでどんどん強くなっていった。エキドナは子供を3人産んだ。その子供はケルベロス、ケートス、ヒュドラだった。ディアーブル族では遺伝という概念があまり無くその子供たちは全く違う生物となった。しかしエキドナは子供たちがとても好きだった。そして人間世界に旅立つ時がきた。40年過ぎエキドナは125歳になっていた。人間世界だと30歳になる。40年前とは顔立ちは変わらず若いまま育っていた。背は少し伸び下半身の蛇はより大きく育っていた。ティポンもまた顔立ちは全く変わらず少し背が伸びていた。周りから見ると屈強な戦士へと姿を変えていた。


「よし…じゃあ行こう」


「行きましょう…この家ともお別れですね…子供たちは私が守ります」


そうして2人で玄関で決意を固めドアを開ける。ドアを開けるとダンダリオンが立っていた。ダンダリオンもまた姿は黒いままで変わらなかった。


「ほおぅ、全員で人間世界へ行くというのか…まぁそれは個々の勝手だからな」


「はい!僕の夢はエキドナの夢でもあるんです!」


ティポンはエキドナを見る、エキドナはティポンを見て頷く。ティポンもまた頷き返す。


「じゃあ向かおう」


そうして一向は人間世界へと繋がる道へと向かう。必ずこの世界へと帰って来ようそう思った。人間世界へと繋がる道はヘル街の隣街のクラット街の奥にある遺跡にあるのだった。クラット街に行くには森を通るとすぐにつく。森はとても暗く寒いまさに悪魔が住んでいる様な森だ。そこをはぐれないように前の人の服を掴み歩いた。少しするとクラット街が見えてきた。エキドナはクラット街に来るのは初めてだった。


「うわぁ凄い…」


目を丸く、キラキラさせながら街を眺める。街の大きさにエキドナは声が自然と漏れる。街はとても大きく発展しているヘル街が隣町というのが嘘かと思うぐらいだ。ヘル街に比べて明るく人がたくさん歩いている。クラット街はレンガの作りの家で高級だった。そこを一向は歩いていく。


「みんなに見られるね…」


6人で歩いているとなんだろうと思い見る人もいる。エキドナは見られて悪い気はしなかったがとても恥ずかしかった。


「まぁしょうがないよ、目立つに決まってるんだから…」


ティポンは緊張しているのか声が小さくなる。街の道をしばらく歩き右に曲がったり左に曲がったりしながら進む。そうすると奥に岩で建てられた遺跡を発見する。


「あそこだ…あそこから人間世界に行くことができる」


「あそこからか…エキドナ…覚悟決まってるか?」


「うん…40年前から覚悟は決まってる…」


3体の子供もぶぉぉぉぉぉぉぉと吠える。一向は遺跡の前につく。遺跡はとても頑丈で入口が塞がれている。ダンダリオンが入口の真ん中に触れると勝手に入口が開く。


「よし…入れ」


「ごくり…よし」


みんなで顔を合わして緊張しながら入っていく、中はとても暗く階段になっていた。とても長い階段が続いた。ずっと下に下っていくと光が見えた。光に辿り着くとそこにはとても広い部屋が広がっていた。


「おおぉ!出た…長かった」


「もうみんな来てるんじゃないか?まずは全員と顔を会わせよう」


「はい!ダンダリオンさん」


その部屋の奥へと進むと丸く青白いワープホールみたいのができていたそれはまさしく人間世界へと繋がる道だった。そこの前で残りの5人が丸くなって話していた。するとルベーザルが6人にいち早く気づいた。


「おぉ!来たのか!!結構大人数で行くんだな!!」


「はい!みんなで行きます!」


「何を考えてんだ!!観光じゃねェーぞ!!」


バクはいつも通り怒鳴りつける。ティポンはもうそれには慣れたようだ。


「だからあんたはいつもうるさいのよ!もっと静かにできないの?」


スニウがまたかという顔をして答える。いつもバクをなだめる役割はスニウが果たしている。


「そろそろいこーぜ…」


アラルがソワソワしてみんなを急かせる。早く行きたい様だ。


「あぁそうだな…あっちへ行ったらみんなで一斉に別れるぞ…」


「わぁぁってるよ!早く行くぞ!!」


アラルは足踏みし始めジョギングをしている。


「なーなー円陣みたいのしねー?」


お調子者のルベーザルは円陣がしたいようだ。全員はその場で丸くなり手を1人ずつ出す全員出し終わったらルベーザルが頑張るぞという掛け声をかけ手を上へと上げ円陣を終えた。


「ここを…通っ…通った瞬間みんなとお別れか…なんか寂しいね…」


ウコが弱々しい言葉でお別れを悲しむそれをルベーザルが聞いて頷く。


「おいおい!作戦が成功するんだからまた会えるだろ!!不謹慎なこと言うなよ!!」


バクがまた怒鳴る。そんなことをしている間にお先にと言ってアラルはもう入って行ってしまった。


「アラルさん行っちゃった…次誰行きますか?」


ティポンはいよいよ顔が真剣になる。もう引き返せない所まで来てしまっているからだ。


「次は俺がいく!!」


ルベーザルがこっちを見てニッコリ笑い手を振りながら入って行った。スニウもすぐに何も言わず振り向かず手を上げて入って行った。


「じゃあな!俺の番だ」


そう言ってバクも入って行く。残りはウコとダンダリオン、ティポン達だけだ。


「僕…僕の番か…みんなさよなら…あっちに行ってもお互い…お互いに頑張ろうね」


ウコも入って行こうとするが人間世界へと繋がる道を2秒間ぐらい長め弱々しく入って行くのはウコらしいとティポンは思った。


「よし…次はお前らの番だ」


遂にエキドナ達の番となった。ティポンとエキドナは深呼吸をした。


「よし!!頑張るぞ!絶対に生きて帰って来るんだ!!」


「うん!頑張ろうね!」


「ぶぉぉぉぉぉぉぉ」


そう全員で言ったあと手を繋ぐ。道を覗くとそこにはでかいスペースシャトルを横にしたような物があった。これに乗って行かないと異世界と人間世界へと繋ぐ間に一生置き去りになり二度と外へと出ることは出来ないのだ。全員で乗り物に乗り込む。その乗り物の中はとても広くちょうど5人の席があった。


「手順は教えた通りだ…」


ダンダリオンが道の外でティポンに言う。この乗り物はティポンが操作するようだ。まず左にある棒を手前に引きハンドルの真ん中にあるボタンを押す。そうすると上に、行き先までの道が書かれている。この乗り物は人間世界へと自動で連れて行ってくれるようだ。


「よし!!行くぞ!!」


「うん!!」


そう言って頭上にあるボタンを押して出発する。この乗り物は動き始めるととても速かった。


「ちょっと話したいんだけどいいかな?」


エキドナはティポンに話しておきたいことがあった。


「ん?なんだ?」


「1番はティポンの夢のために行くんだけど本当は両親に会いたいって気持ちもあったの…言えなくてごめんね…」


40年前に言っておきたかったことをティポンの顔色を伺いながら話す。


「あぁよく分かるよ…両親に会いたいよな…うん…両親にも会えたらいいね!」


エキドナはティポンから優しい言葉がきてほっとしてにっこりと笑い前を向く。それからもたわいのない話をした。そんなことをしているともう人間世界の方の出口へと着いていた。


「よし!!着いたよ!みんな!出てくれ」


外へと出るとそこは岩の中に出来ているほかの人には気づかれないだろう小さな遺跡だった。上から滴が落ちてきている。そのところから出口を探しすぐに出た。出口から出るとそこは一面の雪景色だった。それもそうだろう今は人間世界で言う12月31日なのだ。エキドナとティポンは未開の地で全くどうすればいいか分からなくなってしまった。どこに行けばいいのかも分からないので身を隠せる場所を探すため山を登り始めた。


「寒い……くそ…雪か…」


「早く人間のいない暖かい場所に入ろう….」


体を震えさせながら山を登る。早く寝床を探さなければ人間にばれて大事になってしまう。


「服も欲しいね…」


「あぁ俺がみんなの分バレないように盗ってこよう…でも子供たちの分はないか…」


実はティポンは5mもある巨人だったが小さい時から修行をしていたのでエキドナと会う時にはもうそれを制御することができ、普通の人間になることが出来る。稀に見る天才なのだ。ディアーブル族は悪魔の様な姿、形をしているがそれを人間の形にすることが出来るのだ。カオスティアの8人も本当は人間になることが出来るがわざとしていなかったのだ。


「私も一緒に行きたいけど…ごめんね…」


「あぁ大丈夫だよ!寝床が決まったらバレないように行ってくるよ」


来てお金がないエキドナたちはものを盗むしか出来なかった。そのような話をしていると頂上に着いた頂上は広い湖だった。そこは大沼という場所だった。過去ではそこはもっと木で生い茂っていた。真ん中の大沼は冬で凍りついていた。


「よし!この沼の下に住もう!」


「そうね!ケートスがいるから出来るわよね!!」


大沼は凍っていたがケートスは解けない氷を出すことが出来る。大沼の氷を掘っていき中に空洞を作りそこの周りにケートスの氷で覆って入口をドアを作り固定することで暖かい季節でも水が入ってくることが無く自由に出入りが出来るということだ。寒さはヒュドラの火でしのげるので普通の住居の様になるのだ。そうして家を作り終わりみんなで入る。ティポンは洋服や食料を確保するために店の方へと行った。


「ここが新しいお家ね…なんか元の家思い出して寂しくなっちゃった…」


エキドナは前にティポンと住んでいた家を思い出していた。全く前の家とは違かったが、なんか暖かいものを感じた。そんな気持ちになりながらティポンの帰りを待った。ティポンが帰ってくると暖かい茶色のコートを持ってきてくれた。それを着てもうその日は活動を中断した。それからポラプレスとサクレを探す日々は続いたが一向に2人を見つけることが出来なかった。もう月は12月から4月へとなっていた。カオスティア全員が人間世界から全く情報すらも見つけることが出来ていなかった。


「今日は1日目的を忘れよう」


4月のある日、ティポンがこの日だけ目的を忘れ楽しく過ごしたいと言った。ずっとこの世界で目的だけを追い求めてきたがそれはとても過酷は日々だった。なので今日1日だけでもゆっくり過ごしたいそう思ったのだ。


「うん…私も少し休んだ方がいいと思ってた」


エキドナもそれに納得して今日は子供にお留守番をさせて2人だけでゆっくりと散歩でもしながら過ごすことにした。その日はエキドナは下半身を隠し街まで降りて2人で美味しいものを食べたりした。綺麗な景色を見たり思い出をたくさん作った。こんな日々の方がいいと一瞬でも2人は思ってしまった。


「子供たちにもお土産を持っていきましょう」


「あぁそれがいいな!きっとあいつら喜ぶぞ!!明日から俺はもっともっと今以上に頑張るんだ!!」


もう夕方になったので大沼に2人は戻ることにした。そうして長い長い山をまた登り帰した。そして大沼の所まで着くと大沼の結構手前の方で男の人と女の人が喋っていた。エキドナとティポンは完全にその2人がポラプレスとサクレということを確信した。恐る恐る近づきティポンが声をかける。


「すいません…貴方たちはポラプレスとサクレですか?」


男の人の方もこちらを向きすぐに分かった様な雰囲気を出して話を始める。


「貴方たちはカオスティアの人ですか?僕を捕らえて何がしたいのですか!」


やはり2人の予想は的中した。この2人こそが今まで追い求めてきた2人だったからだ。


「あなたに教えるはずが無い!!エキドナ!!さがってなさい!!うぅぅうぉぉぉぉぉォォォォォォォォ」


ティポンはエキドナを後ろへ退かせると力を出して元の自分へと戻った。この方が人間の時より強くなるのも確かだ。ポラプレスの方も戦闘態勢へと入り後方へと距離を取った。そしてどちらが先に攻撃するかで沈黙状態が続いた。先に動いたのはティポンだった。


「僕は負けない!!ここで成し遂げて立派なカオスティアとなるんだ!!」


「なにを企んでるかは知らないが絶対に許さん!!」


ティポンは男へと走り出し右拳を作り腹にパンチを喰らわせようとする。が簡単によけられてしまう。そしてその体制からポラプレスはティポンの顔面を左足でオーバーヘッドキックするように蹴る。ティポンは真下に蹴られ、蹴られた顔面から叩きつけられる。その反動でティポンは少し浮いてくる、それをポラプレスは両手で掴んでエキドナの方へと投げ飛ばす。


「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、強すぎる…でも俺はまだこんな攻撃効かねェ…」


「頑張れ…ティポン」


エキドナの応援を聞いてティポンは立ち上がりすぐさまポラプレスの方へと向かう。次はポラプレスの方から攻撃を仕掛けてきた。ポラプレスは右足を後ろからの回し蹴りでティポンの右耳を狙う。ティポンはその右足を右手掴んで蹴りを止める。そしてそのまま離すこと無く自分の後ろの地面へと両手で一本背負いの様に決める。そしてまた反対に一本背負いで叩き付ける。そしてその後にサクレの方へと飛ばす。どちらも同じくらいの強さでいい戦いをしている。この勝負どちらに軍配があがってもおかしくないだろう。

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