第1章ー3 暗い夜の中
「どうだい立てるかい?
ベリトが晃孝に近づき手を差し伸べる。
「あぁ助かったありがとう」
晃孝はベリトの手をとり立ち上がる。
「これは僕を助けてくれたお礼さ」
お礼が大きい気がするがまぁいいだろう。
「お前やっぱり最高だ!!」
完全に晃考はベリトのことを気に入っていた。
「で、あいつをどうするんだ晃孝」
ベリトがチェルノボグのほうを指で指しながら答える。チェルノボグはその場に倒れ動いていなかった。
そして晃孝はチェルノボグに近づき全てを吐かせようとする。
「おい!!この1件すべて聞かせてもらうぞ大男!!」
「なんの話だ?」
完全に誤魔化しているチェルノボグ。
「なんの話だ?じゃねェーよ!!何のために
「それは言えるわけねェ...」
意地でもチェルノボグは隠し通す気でいる。
負けたとしてもプライドがあるのだろう。
「はぁ!?なんでだ!!なんで言えないんだ!!」
少しイラッとし始めている晃孝。面倒くさがりの晃考はこういうのはイライラしてしまうのだ。
「俺は実は頼まれてるんでね…」
「......えっ!?ってことはボスはお前じゃなくて他にいるってことか?」
ベリトが心配そうな顔をして晃孝を見ながら答える。
「ど、どうする晃孝」
「どうするって言われてもわからねェーよ!!」
晃考はこのままチェルノボグをどうすればいいか分からなかった。
「ふん、早く俺を殺せ!」
「は?なんで?」
晃孝はチェルノボグが言ったことに疑問になる。
「なんでじゃねェーだろ!俺はあの女を殺そうとしたんだぞ!というか結局は俺も死ぬんだがな……」
「依頼人にだよな......」
ベリトはすぐに気づき答えを出す。
「あぁそうだよ……」
「なんで殺されるんだ?」
未だに意味を分かってない晃孝は本当のアホだ。
「まぁお前の事情とかはよく分からないけど俺はお前を殺さないぞ」
「何故だ!!ここまでやって何故殺さない!!」
「殺す必要がないだろ」
「くっ………………ハハハハハハハハハハハハ……笑わせてくれるここまでやって俺を殺さねェーか……負けたぜ…」
笑いながらチェルノボグはもう喋らなくなった。この面白いやつに完全に負けを認めたのだろう。
「あ!!そんなことより礼羽!!!」
晃孝は急に慌てて酒場に入る。
礼羽は明らかな心配そうな顔で店の中でじっと待っていた。
「礼羽!!無事か!!」
「うん……ありがとう」
「良かったよ無事で!!あぁ……本当に……無事で……」
晃孝は急に暗い顔になり、膝から崩れ落ちる。
「大丈夫!晃孝!!」
急に晃孝が崩れ落ちてびっくりする礼羽。
「何とも俺は………何が平気か?だよな………笑っちゃうよな……」
晃孝は気づいた。
「俺はお前を助けられなかった」
「えっどうして?私は晃孝のおかげで助かったよ!」
晃孝は自分の力で助けることができなかったことを後悔してるのだ。
「みっともない……俺はお前を助けるなんか言って!!そんなこと言って簡単にやられてぶちのめされてベリトに助けられて!!何もしていないのに平気かって……おかしいよな……俺は必要無いよな……悪い……」
「そんなこと無いよ……かっこよかったよ!私のために最後まで諦めないで戦ってくれて嬉しかったよ…」
礼羽が完全に落ち込んでいる晃孝を励まそうとする。
しかし晃考のプライドはズタズタになってしまっていた。
そして晃考は、
「やめてくれ!!かっこ悪いに決まってるだろ!!俺は負けたんだ………」
「私は!!私は…かっこいいって思った!初めて私を助けてくれた時もそう……晃孝がそんなに落ち込んでいたら私は……誰を信じればいいの?」
「えっ!?……」
こんな弱い自分をまだ信じてくれると礼羽ははっきり言ってくれ驚きの声を漏らす。そして続けて礼羽は話し出す。
「私は晃孝が酒場に戻れって言った時、私は信じてたから酒場に戻った…私は晃孝を信じてる……だから落ち込まないで前を向いて!」
「………ごめん、俺は何をしてるんだ、俺らしくない…そうだ俺は初めに決めたんだ!礼羽を絶対助けるって!悪ぃ、今さっきの話は全部夢だ!」
「晃孝!礼羽さんもちょっといいかな話があるんだ」
ベリトが店の中に入ってきて2人を集める。そして話し出す。
「なんだ?ベリト、話って」
「うん、提案なんだが……僕2人を助けたいって思ってね…どうだい?」
「お前、俺たちを助けてくれるのか?」
そんなこと大歓迎だ。あんな強いベリトが入ってくれれば百人力だろう。すぐにオーケーしようとするが、
「おい!!ちょっと待て!」
3人の話を割って入ってきたのはチェルノボグだ。
「なんだ?大男!」
晃孝が急に声をかけられて困惑しながらも話を聞こうとする。
「俺も連れていけ役に立つ」
「えっ!?そんなこと駄目に決まってるだろ!そうだろ晃孝?」
「あぁいいぞ!」
「えっ!?どうして!!晃孝!こいつは礼羽さんを殺そうとしたんだぞ!許せるのか?」
礼羽を狙っていたチェルノボグを仲間に入れるなどベリトには到底考えられないことだった。
「許せないよ!!許せないけどこれとそれとは話は別だ」
「なんてこと言ってんだよ晃孝!!裏切るかもしれないぞ!礼羽さんもいいの?」
「うん!晃孝がいいって言うのなら私はそれを信じる!」
礼羽は完全に晃考が言ったことならオーケーを出してしまう。
「うぅぅ2人ともお人好しか………それならいいけど」
ベリトがしょうがなくチェルノボグを入れることを認める。
「すまねぇ俺を殺さなかったお前を俺は全力で助けよう!」
「おう!!ありがとうチェルノ!!」
「何言ってんだ!俺はチェルノボグだ!!」
「というか協力者はこんなに揃ったが俺達は何をすればいいんだ!」
晃孝がまた率直な疑問を答える。今ならまたやれることが増えているかも知らない。
「そうだね…そう言えばチェルノボグは誰かに頼まれたって言ってたけどそいつがボスなんじゃないか?」
晃孝の疑問をベリトが次はチェルノボグに繋げる。
「悪いが……俺はボスの名前も知らないし、会ったこともないんだ……」
「んー完全に振り出しに戻ったってことか……」
晃孝が肩を落とす。
「じゃあもう1ついいかな?チェルノもベリトと一緒でこの国の奴じゃないってことでいいんだよな!」
「えっ!?……ああ」
何か言いたそうだったが晃孝の質問に答えた。
「おい!!お前ら!」
そう声をかけたのは酒場のオヤジだ。
「おぉぉおっちゃん!!」
「晃孝お前!明日学校あるんだろ!早く寝ろ!!あと俺は酒場が直るまで少し経営を休もうかと思う」
「わ、悪ぃおっちゃん分かった分かった!じゃあみんな俺の家に来てくれ!」
晃孝は小さい頃に親を無くしているので酒場のおやじのアパートで1人暮しをしている。そしてみんなで晃孝の家に1夜泊まった。
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そして次の日、朝なのにとても騒がしい。寝坊だ。
「やばいやばいやばいやばい!!!
学校に遅れる!!」
3人に見送られ家を出る晃孝。
外を急いで走り出し、駅に向かう。駅では晃孝の親友が待っている。
親友の名前は
幼稚園の頃からの仲だ。
やっとの思いで駅に着いた晃孝一応約束時間には間に合った様だ。
「おはよう!!晃孝!今日もギリギリセーフだね!」
了は晃考の寝坊をゲーム感覚で楽しんでいるようだ。
「ふーセーフはセーフだろ!早く行こうぜ」
晃孝の学校は私立で名前は東送学校という場所で偏差値は普通だ。
そして学校へ行ってその帰り道。
「今日晃孝の家によってもいい?」
「えっ!?今日は駄目だ!!」
「え?何でさ!いつもは自分から来てって言うくせに!」
何故なら晃孝の家には既に客人が3人ほどいるからだ。了だけはあいつらと関わらせてはいけない。必ずチームに入ろうとするからだ。
「今日は客が3人ほど来てるんだよ」
客が来ていれば、流石に家に来るのは出来ないだろう。
「晃孝!別に俺は大丈夫だぞ!」
予想外の返答だった。普通だったら断るのがマナーというものだろう。しかしそういう男が了なのだ。
「うーーん………あぁ分かった」
しょうがないのでそう言って了を家に連れて行った。
「ただいま……」
「本当だ!靴がある!おじゃまします!」
元気に了は家の中に入る。
「誰だよそいつは!」
まず初めにチェルノボグが了に気づいた。
「まさか協力者を連れてきてくれたのかい!晃孝!」
ベリトは完全に勘違いをしている。
「えっ!?なになになに!協力者って!晃孝!俺に内緒で楽しくやってるんじゃないだろな!俺も混ぜろよ!!」
了は完全に興味を持ってしまった。
「ち、ちがうぞベリトこいつは俺の小さい頃からの親友だ………」
今からなんか言っても了には遅い。
ベリトはしまったという顔になっている。
「うそっ!悪い!!口が滑ってしまった……」
「でも了は悪い奴じゃないから仲間に入れてもいいと思う!」
「おぉぉそう来なくっちゃ!!おぉぉぉぉぉ!?」
「どうした?」
了の目線は部屋の隅にいる礼羽にロックオンしていた。
「お、おい!!女子がいるじゃねェーか!!ついに晃孝にも夏がやって来たんだな!」
今は4月で夏には程遠い。
そして晃孝はそれを簡単にスルーして話を進める。
「まぁ了…俺たちの役目だけどこの礼羽を守るっていう役目なんだ」
「OK任しときな!!小学校に空手を習ってたから晃孝よりは使えると思うよ!!」
「おい!!!まぁ間違ってはないが………もういいや」
しかし自分も実践で強くなっている。今なら了にも勝てるような気がしていた。
「みんな腹減っただろ!!おっちゃんの所に行くか!」
「でも昨日店休むとか言ってなかったか」
昨日酒場のおやじが言っていたことを思い出すチェルノボグ。
「おっちゃんは俺の親みたいなもんだから飯くらい作ってくれるさ!!」
ということでみんなで酒場のおやじの所に夕飯を食べに行くことになった。
そして酒場に近づくにつれて晃孝は段々と異変に気づいてきた。少し酒場が暗いのだ。少し心配になった晃孝は急いで酒場のすぐ側まで走った。そしてその異変の理由はすぐに分かった。1人の本を持った男がおやじに何かを言っている。もう少し近づくとその言葉はハッキリと聞こえてきた。
女は何処にいる
この言葉だった。
「おっちゃん!!大丈夫か!」
「来るな晃孝!!今すぐあいつらと一緒にどこかに逃げろ!!」
酒場のおやじは急いで晃考達が離れるように言う。
「何言ってるんだ!!」
「あの娘を助けるんだろ!!分かってる!俺はお前の義理でも親なんだ!お前のことは分かる!!早くいけ!」
晃孝はこれは緊迫な状況で早く逃げないと礼羽がまずいと感じた。晃孝は4人の所に戻り事情を説明する。その間におやじは必死に敵に血だらけで抵抗している。おやじはボクシングをやっていて体力は人1倍持っているので少しは耐えれるだろうと思った。
「みんな逃げるぞ!!もう敵は来てた!!俺たちが平和ボケしていただけだ!!今は逃げるんだ!!」
「じゃあ私のお婆ちゃんの所に逃げよう晃孝!」
礼羽の提案で意見はすぐにまとまった。そしていつも了との待ち合わせで使う酒場の真横にある駅に急いで駆け込んだ。
「急いで電車に乗り込め!!おっちゃんが時間を稼いでくれてる!!」
「おっちゃんありがとう!!無事でいてくれよ!ちょっと行ってくる!!」
5人全員駅に乗り込んでホッとした。そして電車が出発しはじめた。晃孝は酒場が電車から見えるので、見るのは嫌だったが恐る恐る見た。おやじは全員乗り込んだのを見てホッとしニッコリこっちを見て笑った。
その瞬間おやじの頭はとんだ。
「えっ!?…………………」
出発した後で早かったのだがよく見えてしまった。
「おい…………いまどうなった……ちょっと待てよ…あァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」
おやじの最後が何度も何度も頭にフラッシュバックする。晃孝は崩れ落ちながら電車の中で泣いた。
「そんな、そんなことって……晃孝……」
礼羽も信じられない顔で呆然とする。
そして暗い夜の中を群馬に着くまで誰も1言ももう喋らなかった。喋ることができる空気でもなかった。
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