第16話 奴との再会

シノイ「…アタシの攻撃を無傷で受け止めるなんて…アンタ、何者だい…?」

シノイは片腕で攻撃を受け止めたコールに驚きつつも、大剣を構え直して、コールに刃を向けていました

コール「…トレジャーハンターだよ…」

シノイ「…アタシの攻撃を受け止められるなんてね…。ただの変態トレジャーハンターだと思っていたけどあそこにいる奴らよりは骨がある奴みたいだね…。」

コール「…ちっ、俺は早くこの傷ついた心を静かな空間でじっくりと癒してやりたいんだ。かかってくるなら早くかかって来い」

シノイ「ふんっ、丁度いいね。アタシの事を絶壁だって言った報い、しっかりと受けてもらうよ!!覚悟しな!!」

シノイはそう言うと大剣を両手で持ちあげてコールに飛びかかりました。

ホライ「コール!!」

コール「おらあ!!」

コールは素早く振り下ろされた大剣を両手で受け止めて自然な動作で受け流しました。

ホライ「また受け止めた!」

ロゼ「…何故なんだ?あれほどの強力な攻撃を傷一つなく受け止められるなんて…」

ヴィン「…よく見ろ」

ヴィンはコールの手を指差してホライ達の視線を誘導しました。

ニコル「…彼の手が…光っている…?」

ヴィン「あれは魔力だ」

ロゼ「魔力…?」

ヴィン「あれは魔攻術と呼ばれる1つの武術だ」

ホライ「まこうじゅつ?」

ニコル「…聞いたことがあります。魔力を自分の体に流し込むことで筋力を活性化させる古来より伝わる武術…。まさか彼がそれを使えるだなんて_」

コールは次々とシノイからの攻撃を魔力で覆った体で防いでいました。

ロゼ「…的確に攻撃される部位を判断して素早く魔力を操作している…?」

ヴィン「いや、奴はいつどこに攻撃が来ても瞬時に反応できるように常に全身を魔力で覆っている…」

ホライ「全身に魔力…それって常に魔力を放出しているってこと…?」

ヴィン「ああ、それも無駄に放出されないよう上手くコントロールしている。相当な集中力が無いとと成せる技ではない」

ヴィンが魔攻術について話している間にも、コールとシノイは互いに攻撃をしては避けてを繰り返し、どちらも一歩も引かない攻防戦を繰り広げていました。

ヴィン「…今奴と対等に張り合えるのはコールだけだ。この間に俺たちはいつでも戦えるよう消耗した体力を回復するぞ」

ホライ「…うん」

ホライはコールを見守りながらその場にしゃがみこんで体力を回復することにしました。


時間が経つにつれ戦いは激化していきましたが、どちらも攻撃を当てることが出来ずに

いました。

しかし常に魔力を出し続けているコールは徐々に体力は消耗されていき、戦況はシノイが優勢になりました。

シノイ「はあ…さすがのアンタもバテてきたようだね…」

コール「そ、それは…てめえもだろうが」

シノイ「ふん、強がってられるのも今のうちだよ。あともう少し粘ればアンタの魔力は空っぽになる。そうすればこの勝負、アタシがもらったも同然だよ」

シノイはそう言うと口元をニヤつかせてジリジリとコールに詰め寄っていきました。

しかしコールはそんなシノイに臆することなく睨み返していました。

コール「へっ…今のうちに笑ってろ、てめえをぶっ飛ばす方法はこっちにはあるんだよ」

シノイ「アタシをぶっ飛ばす方法だって…?アンタの攻撃はこの大剣がある限りアタシに届くことは無い、それなのにどうやってぶっ飛ばすって言うんだい?」

コール「…こうするんだよ」

シノイ「…!!」

コールは全身を被っていた魔力を右腕に集め、深く腰を落として構えはじめました。

ホライ「…!!魔力が集まってる!!」

コール「…その剣が打ち消しきれないほどでかい一撃をぶつけてやればいい!!行くぜ!!」

コールが魔力を集めていた右手を捻るように前に突き出すと、右手から魔力がドリルの様に解き放たれシノイに向かって真っ直ぐ飛んでいきました。

シノイ「はっ!さっきまでとどう違うって言うんだい!?こんなものアタシの剣で…」

シノイが攻撃を防ごうと大剣を目の前に立てると、攻撃を受け止めた大剣は後ろにいたシノイを巻き込んで後ろに押しやられていました。

シノイ「な、何っ!?防ぎきれな…」

耐えられず大剣ごと吹き飛ばされたシノイはそのままの勢いで壁に衝突してその場に倒れ込んでしまいました。

ホライ「す、すごい…そのままシノイを倒しちゃった…」

ニコル「…なんて滅茶苦茶な力なんだ…」

ヴィン「………」


しばらくその場で唖然としていたホライ達は魔力を使い切ってヘトヘトになっているコールの元に駆け寄っていきました。

ホライ「すごいよコール!あんなに強かったんだね!」

コール「へへっ…まあな。それよりも早くリーゼちゃんの所に行ってやろうぜ」

ホライ「うん、わかった」

ロゼ「コール、立てるかい?肩を貸そうか?」

コール「お、すまねえな…」

ヴィン「………待て」

ロゼがコールを担いでリーゼの捕まっている部屋に向かおうとしたその時、ヴィンが部屋に向かおうとしたホライ達を止めたのでした。

ロゼ「ヴィン…?どうかしたのかい?」

ヴィン「…まだ立ちはだかるのか」

ホライ「…!?」

全員が一斉にヴィンの向いている方角を見ると、倒れていたシノイがいつの間にか立ち上がっていました。

ホライ「た、倒れたはずじゃ…」

シノイ「あんなのでアタシが倒せると思ったら大間違いだよ…。まだアタシは負けちゃいない…。勝負再開だ!!」

シノイは傷ついた体で大剣を振り上げて構え始めました。

ホライ「そ、そんな体で僕達と戦おうって言うの!?無茶だよそんなの!!」

シノイ「うるさい!!勝ち逃げは許さないよ!!」

ホライ「なんであんな無茶をしてまで…」

ヴィン「…ホライ、構えろ」

ホライ「えっ、でも…」

ヴィン「このまま奴に斬り刻まれたいのか?」

ホライ「…わかったよ」


「…シノイ、もういい」


ホライが構えたその時、その場にいた全員の耳にどこからともなく低い声が聞こえてきました。

コール「だ、誰だ…!?」

シノイ「その声は…!」

ホライ「…!?シノイ…?」

シノイはその声を聞いた途端、構えていた姿勢を戻し大剣を下ろして俯いていました。

シノイ「ゼ…ゼオ様…!」

シノイが声の主らしき人物の名前を言うと、黒い光と共に黒衣の男が現れたのでした。

ホライ「…!!」

そしてホライはその黒衣の男に見覚えがありました。

ロゼ「…ホライ?」

ホライ「あ…あいつは…!」

ホライはその男の姿を見ると、突然足が震え始めその場から動けなくなりました。


ゼオと言う名の黒衣の男はゆっくりとシノイのいる所へと歩いて行き、傷ついたシノイの前で立ち止まりました。

ゼオ「お前ほどの実力者がここまで追い詰められるとはな…」

シノイ「い、いや…これは…」

ゼオ「ふっ、何も言うな。もう下がれ」

シノイ「えっ何故ですか!?この奥で捕まっている女をアイツらに渡したらいけないはずでは…」

ゼオ「その必要はもう無くなった。戻るぞ」

シノイ「………はい」

ゼオがそう言うとさっきまで荒々しくなっていたシノイが嘘のように大人しくなり、ゼオの元に戻っていきました。

ニコル「…あんなに凶暴だったシノイが静まった…?あの男はいったい…」

ゼオはシノイに向けていた顔をホライ達の方に向けて低い声でホライ達に話しかけてきました。

ゼオ「…あの女は返してやろう。ただし、これ以上俺達に関わらないことだ…。命が惜しければな」

そう言うとゼオはシノイを連れてその場から去ろうとしました。

ホライ「…ちょっと待てよ」

ゼオ「…」

ゼオが去ろうとしたその時、ホライが足を震わせながら去ろうするゼオを引き止めました。

ロゼ「…ホライ!?」

ゼオ「何か言いたいことがあるのか?」

ホライ「…僕のこと、覚えてないのか?」

ゼオ「…なんの事だ」

ホライ「…あんた、ついこの間祠で1人の子供を斬りつけなかったか?」

ホライがそう言うとゼオは何かに勘づきホライの顔をじっと見つめました。

ゼオ「…ほう、つまりお前はあの時の子供か…」

ホライ「…そうだよ、お前に付けられた傷ら今でも残ってる」

ホライの足の震えは更に大きくなりましたがホライは引き下がることなくゼオに食いついていました。

ゼオ「…あの一撃を受けて生きているとはな。奇跡に恵まれたようだな」

ホライ「………」

ゼオ「いや、お前から感じ取れる力…。どうやら奇跡の一言で済むようなものではないようだな…ふっ…」

ゼオは身構えているホライを見て嘲笑うかのように笑みを零していました。


そんなゼオの態度を見てホライは震えていた足を踏ん張らせてゼオにさらに喰らいつきました。

ホライ「…リーゼをさらった理由はなんだ!!」

ゼオ「…お前には関係の無い事だ」

ホライ「誤魔化すな!答えろ!!」

ゼオ「…シノイ、行くぞ」

ゼオはホライに背を向けてシノイと共に去ろうとしました。

ホライ「ま、待て!!答えろ!!リーゼを攫った理由はなんだ!!それに…魔王は本当に復活するのか!?」

ニコル「…!?」

ヴィン「…!」

コール「はあ!?」

ロゼ「………」

ホライの魔王が復活すると言う言葉に何も知らなかったロゼ以外の仲間達は戦慄していました。

ゼオ「…やはりその事を知るために旅をしていたのか」

ホライ「…」

ゼオ「知りたいならば…更に力を高め俺を追ってみろ。俺の足元に及ぶ強さになったのなら、改めて相手をしてやる」

ホライ「ま、待て!!」

ゼオ「…シノイ」

シノイ「…はい」

ホライがゼオを追おうとすると、シノイが飛び上がり上空から大剣をホライの目の前で突き刺してきました。

ホライ「なっ!?ど、どけよ!」

シノイ「…アンタ、ゼオ様を追うつもりかい?」

ホライ「えっ…?あ、当たり前だ!」

シノイ「バカだね、アンタがどんなに強くなったってゼオ様に敵うわけがないのさ。まあ死にたいって言うのなら勝手にすればいいけどね」

ホライ「………」

シノイ「でも…これだけは忘れんなよ!」

シノイは突然声を荒らげてホライに顔を近づけました。

シノイ「今回はあの変態トレジャーハンターにやられたけど、まだアンタとの勝負は着いてないからな!!次会った時はアンタと決着を着けてやるから覚悟しな!!」

ゼオ「…シノイ」

シノイ「はっ、申し訳ございません…。つい興奮してしまい…」

ゼオ「…理由はいい。行くぞ」


ホライが静止する間もなく、ゼオとシノイは黒い光に包まれて消え去っていきました。

ホライ「くっ…色々聞けるチャンスだったのに…」

ロゼ「…ホライ」

ホライが悔しがる中、仲間達がホライの元に駆け寄りました。

ニコル「…ホライ、どういうことなのですか?魔王が復活するというのは…」

ホライ「…そう言えばまだこの事を知ってるのは僕とロゼだけだったよね」

ヴィン「…説明してもらうぞ」

ホライはひとまずニコル、ヴィン、コールの3人に自分が黒衣の男と出会った時の事を淡々と話しました。








サイズ「やっほ~ゼオ~」

ゼオ「…サイズ、まだ何か用があったのか」

サイズ「な、何かあったのかってまだ用事があったのに勝手に帰ったのはそっちだろ~!」

ゼオ「…これ以上付き合っていては時間の無駄だと思ったまでだ」

サイズ「あ~ひっど~い…

まあいいけど。君がそんな性格だってこと、分かってたし」

ゼオ「…ふん」

サイズ「というかさ~君とシノイちゃん、あっちの古城で子供たちとお話してたでしょ?」

ゼオ「…それがどうした」

サイズ「いや~どうやらその子達、カルテから魔道兵器の復活を止めさせた子供達みたいなんだよね~」

ゼオ「…魔道兵器を、だと?」

サイズ「そうそう、あんな子供達がカルテに勝つなんてちょっと信じられないよね。カルテも僕ほどじゃないけどかなり腕のたつ魔道士なのにさ」

ゼオ「………」

サイズ「でさ、そこで相談なんだけど。カルテを倒したって事は少なからずあの子供達も強いってことになるよね?だったらあの子供達を…ごにょごにょごにょごにょ」

ゼオ「…好きにすればいい」

サイズ「やたっ!じゃあ早速計画を練らなきゃ!スタコラサッサ~…」


ゼオ「…あいつらはあのカルテを打ち倒していたのか…。ホライ…まだ何かをしでかしそうだ…」

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