　ついに見つけた。

　勇者がやってきた「現代日本」とやらに行く方法を。

　ギラワハの魔法陣のインクにスカミの花の香油を加え、バシダイイ鳥の風切羽を五枚燻（いぶ）したのち、その炭を手の平に塗ってドワカカの書の三番、テナハの呪文を唱える。

　理論上はこれで異世界「現代日本」にたどり着けるはずだ。

　だが、自らの意志で世界間を移動した事例は少なく、上手くあちらの世界にたどり着けたとしても我が我としての原型をとどめていられるかは想像もつかぬ。

　身体の一部を失うかもしれないし、記憶が欠けることになるかもしれない。そしておそらく、「虹魔大賢者ヘル」としての誇るべき魔力も……この転移魔法を使えば一切を失い、もう二度と元の状態に戻ることは叶わぬであろう。

　だが、構うものか。

　この日記帳さえ手元にあれば問題ない。ここに刻んだ復讐の誓いこそが我の原動力なのだから！

　さらば勇者に汚されし我が世界よ……いつか復讐を果たすその日まで、しばしの別れだ……！

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