第9話 ディズニー・クルーズライン(後編)

 前のエピソードではディズニークルーズのご紹介のみだったので、船やクルーズの特色について語っていきます。




 まずは、船体から。


 煙突は赤く、その下から船首付近のデッキまでが白色、その下は黄色い線が1本引かれ喫水線までが紺色、海面下はまた赤色の塗装。

 この通称「ディズニーカラー」、勘の鋭い方などはもうお気づきかもしれませんが、ミッキーマウスの色です。

 ちなみに救命ボートは全て黄色となっています。

 本来、救命ボートの色は法律でオレンジ色と決まっているのですが、ミッキーカラーといえば即ちディズニーのイメージカラー。これをどうしても変えたくなかったので、国際海事機関と交渉し「空からよく見えるのであれば構わない」と変更を認めてもらえることとなりました。このこだわりこそ、ディズニーの神髄です。


 船の象徴たる煙突には、青波3本とミッキーフェイス(白い丸3つ)を重ねたコーポレートマークをつけています。

 不思議なことに、この煙突は2本あります。20世紀頃のクルーズ客船をイメージしたデザインのため、ダミーの煙突を1本設置しています。

 ここまでは全ての船で共通した仕様です。

 ディズニー・マジックおよびディズニー・ワンダー(以下マジック級と呼びます)は重量が約85,000tの全11階建て875室、ディズニー・ドリームとディズニー・ファンタジー(以下ドリーム級と呼びます)が約130,000tで全14階建て1250室です。




 続いて、客室紹介へ参りましょう。

 部屋タイプは全部で4つ。

 インサイド、オーシャンビュー、ベランダ、コンシェルジュです。


 インサイドは窓のない内向きの部屋となっていますが、一般的な客室クラスでは最も部屋数が少ないランクです。


 オーシャンビューは文字通り海が見える窓付きの部屋ですが、船内ではデッキ1およびデッキ2といった最下部の階が該当します。


 ベランダルームは部屋数が最も多いタイプで、大多数の部屋がこのタイプになります。マジック級ではおよそ4割、ドリーム級に至っては半分以上がこのタイプです。価格はやや高めではありますが、「ディズニークルーズの標準タイプの部屋」といえると思います。


 最後のコンシェルジュですが、簡単に言えばスイートルームです。

 個別のラウンジから専用の屋上エリアまであります。ぶっちゃけこの部屋は行ったことがないのでこれ以上のことが書けません。




 ほとんどの部屋で共通の特徴が、「バスルーム・トイレが別になっていること」です。海外に滞在経験のある方はご存知とは思いますが、普通のホテルなどではトイレとバスルームが同じ空間にあるのです。


 客室清掃を担当するルームキーパー、「ステートルーム・ホスト(女性の場合はホステス)」は数部屋単位で担当が決まっています。

 乗船日に部屋を訪ねて挨拶をしてくれますので、ここでしっかり名前と顔を覚えて仲良くなりましょう。




 さて、まだご紹介したいディズニークルーズの特長はまだまだありますので、どんどん参りましょう。


 クルーズと言えば夏、夏と言えばプール。プールといえばウォータースライダー。

 ええ、ありますとも!

 プールはファミリー向けのプールが2つと、18歳以上専用のクワイエットプールが1つ、そしてなんとキャスト専用のプールまであります。

 ダミー煙突を利用したウォータースライダーはドナルドがモチーフとなっています。

 プールはマジック級ではデッキ9、ドリーム級ではデッキ11にあります。キャスト用プールは船の最前部にあります。




 ……ん? 18歳以上専用?はい、そうです。


 ディズニークルーズはファミリー向けのクルーズではありますが、その元となったディズニーランドの原点は「子供も大人も楽しめること」にあります。

 そのため、0歳児から子供を船内で預かってくれる託児所「イッツ・ア・スモールワールドナーサリー(3歳ごろまで)」、「ディズニー・オセアニアクラブ」、「ディズニー・オセアニアラボ」があります。

 12歳から17歳については「ヴァイブ」「エッジ」で預けることができます。

 子供を預けている間、親は大人専用のレストランで食事をしたり、カフェやプール、エステサロンを満喫出来るというシステムです。

 ただ、お子様を預ける際は「日本人キャストがいない」という前提の上でご検討ください。

 1回、小学生の頃にオセアニアラボに行ったことがあるのですが、英語も全くできない、かつ人見知りだったため1日もちませんでした。その後は部屋で引きこもるか親と連れ立っている状態でした。




 食事と言えばディナー、ディナーと言えば晩餐会、晩餐会と言えば……


 おもてなしの達人、ルミエール!(Byミッキーマウス)


 ……ではなく。それはそれで楽しそうですが、違います。




 ディズニーの大きな特色の1つ、「ローテーションダイニング」です。

 最後の夜を含めた全てのディナータイムで、各船3つのレストランを順番に巡っていくというシステムです。


 料理を運ぶキャスト「メインサーバー」、ドリンクを担当する「アシスタントサーバー」、そしてサーバー達を統括する「ヘッドサーバー」はクルーズ中はずっと同じ人が務めます。とても気さくなキャスト達がディナーを彩ってくれます。

 デメリットと言えば、クルーズ最後の夜が寂しくなることでしょうか(笑)。

 ただ、下船日の朝食は最後の夜と同じレストランが選べるので、最後の朝も会うことが出来ます。


 ローテーション・ダイニングレストランのうち2つは各船で異なりますが、1つだけは全ての船で同じものになっています。

 名前は、「アニメーターズ・パレット(Animator's Palate)」。

 その名の通り、ウォルト・ディズニーの本業であるアニメーターをモチーフとしたお店なので、テーブルナンバーの札が絵筆入れだったり、壁にディズニーキャラクターのスケッチが描かれています。

 ちなみにこの壁、最初は真っ白なうえ描かれているのは鉛筆のスケッチなのですが、食事が進むと徐々に色がついていき、最後はカラーイラストが現れてきます。

 レストラン全体がショーの舞台なのです。

 ドレスコードは基本的にカジュアルですが、どのクルーズも最低1日はフォーマルナイトがあります。その日のドレスコードは全て後述の「パーソナル・ナビゲーター」に記載されていますので毎晩確認しておくのが吉です。

 ちなみに、カリブ海クルーズでは「パイレーツ」というドレスコードがあったり、ハロウィン期間は「ハロウィン」という変則ドレスコードがあります。どちらも要するに仮装可という意味です。




 もう1つ、大事なものがあります。

 ディズニーと言えば……キャラクターグリーティング!!


 最初に客室に入ったときと最終日以外の毎晩、「パーソナル・ナビゲーター」と呼ばれる翌日の船内イベントが書かれたスケジュール表が全客室に配られます。

 このナビゲーターを見ながら、翌日の予定を立てていくスタイルになります。

 誰がどこで何時からいる、と言う情報も載っていますので、お目当てのキャラクターに会いに行きましょう。

 1キャラあたりのグリーティング時間は短いので、時にはラインカットの憂き目に遭ってしまいますが、同じキャラが大体1日複数回はやってくるので安心して下さい。

 時間は朝8時から夜の10時過ぎまでと、船内にいれば1日どこかで誰かに会えます。ばったり会ったキャラと写真を撮ってもよし、出待ちなどをしてオフショットを狙ってみるのもまた一興です。先述のフォーマルナイトや変則ドレスコードの日は、夕方以降からミッキーたちもドレスアップしています。

 ただ、寄港地に停泊しているときの昼間は全くやらないので注意して下さい。というか、そもそも船にゲストは大抵いないです。なぜなら……




 各寄港地において、事前予約制のアクティビティーがあるからです。

 地元のランチパーティーだったり、砂金採取の体験だったり、寄港地での観光をディズニーが用意しています。

 もちろん現地のツアーを予約するのも良い選択です。ただし、船の門限に遅れそうなときは自分で船に連絡をしなければなりません。

 万が一遅れたとしても、全員戻るまで待ってくれているので問題はありませんが、他のゲストに「君たちを待っておったよ」などとギャングウェイの上から煽られるでしょう。


 ちなみにカリブ海クルーズの最終寄港地、キャスタウェイ・ケイでは、ミッキー達が船から下りてグリーティングをします。




 まだ大事なことを忘れていました。言語です。

 ほとんどの説明は英語ですが、レストランのメニュー(朝食及びデザートメニュー以外)と、チェックイン時に貰える「ヴォヤッジ・ナビゲーター(船内設備や、初日の食事スケジュールが記載されています)」は日本語版がありますので、キャストやサーバーに頼むと別途用意してくれます。ディナーメニューに至っては1度頼めば次回以降は最初から日本語版を持って来てくれます(前述のシステムなので当たり前といえば当たり前ですが)。

 機械翻訳ではない、ちゃんと意味の分かる日本語なのでその点はご安心ください。

 少し話は逸れますが、寄港地のジュノーで観光マップを入手した際、日本語版もゲットしたらあまりの機械ぶりに「日本語がわからない」という逆転現象が起きました。




 最後に、船内での支払いについてです。

 アメリカは日本と違いキャッシュレス化が進んでいるので(日本は大いに見習って頂きたい)、クレジットカードが基本ですが、チェックイン時に貰うルームキー(Key To The Worldカードと呼びます)に決済用クレジットカードを登録することで部屋付けでの支払いが可能になります。

 ちなみにコインランドリーについては以前は現金式だったのですが、各船ともにトークン式になりましたので、ルームキーに支払い機能を付加しておくのは事実上必須です。というか、船内は「ルームキーで支払う」のが大前提です。

 また、ルームキーは寄港地での乗下船の際使用しますので、クルーズ中は生命線と考えてください。

 ただし、レストランや軽食・ソフトドリンク類は先述の通り乗船費用に含まれていますので、存分に味わってください。食べ過ぎにはご用心ですよ。




 オタク特有の「好きなことをしゃべっていると話がとたんに長くなる」が発動してしまいましたが、第1章はここで終わりとなります。

 次回の第2章は、この「ディズニー・クルーズライン」を体験した少女の物語になります。

 ごくごく短いので、クルーズの香りを少しでも感じていただけたら幸いです。




【参考資料】

 参考画像をTwitterに一部公開しておりますので、閲覧はご自由にどうぞ。


『ディズニー・ワンダー号』

 https://twitter.com/nanami_kaku/status/1029298818875981824

 https://twitter.com/nanami_kaku/status/1029280722920431616


『パーソナル・ナビゲーター』

 https://twitter.com/nanami_kaku/status/1029565839966523392

(1・2枚目が初日に配布されたもの、3枚目は同日の夜に配布されたものになります)

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