男の私が女性ホルモンを飲んで変化したこと
アリス
女性ホルモン剤を飲むきっかけ
これから書くことは男性である私が女性ホルモンを飲んで以降、身体や感情および精神にどのような変化が生じたのかについての個人的な記録です。
直接的に生々しいことは書いていませんが、18歳未満は読まない方がいいです。
まず、私が最初に性ホルモン剤に興味を抱いたのは高校一年くらいの時でした。
当時、両親がパソコン(ウインドウズ98)を購入し、私はネット検索で『女の子になるための方法』を調べ始めました。
『髭を生えなくする方法』
『すね毛をなくす方法』
とか、そういうワードで検索していたような覚えがあります。
すると、まあ脂ぎった中年の男性が、女性ホルモンを飲んで頭が禿げたまま中途半端に女性っぽい雰囲気になっている姿を目にしたわけです。当時の私は愕然としました。
急がなければ手遅れになる。
そう思いました。
急いで男性であることをやめなければ、こういう醜い姿になってしまう。
ひどく冷血で嫌なやつだなあと自分でも思うのですが当時の私は率直にそんな風に思ってしまいました。
そして色々調べているうちに、女装者やゲイと呼ばれる人たちと自分の感覚が一致していないことに気づきました。
女の子の服? スカート?
口紅? つけまつげ? アイシャドー?
そんなのどうだっていい。面倒くさい。と、そう思いました。
そんなことよりも自分は、醜い姿になるのを避けたいと強く願っていました。
醜い姿とは?
私にとってはそれは『成人男性』でした。
肩幅だったり身長だったり体重だったり、髪の毛だったりすね毛だったりヒゲだったり、そういう部分が男性みたいにけむくじゃらになるのが恐ろしくて仕方ありませんでした。
ですから、厳密に言えば、女性になりたいというよりも、男性的な身体的特徴になるのが嫌だったのです。
そしてよく誤解されるので言いますが、私は男性が性対象として好きなわけでもありません。オカマとして芸人をやっていた頃は『きみは男が好きなの?』と面と向かって平気で聞いてくる馬鹿がよくいたのですが、私は男が嫌いです。そんなことを聞いてくるお前みたいな男が何より嫌いだ。
と、いうわけで私は幼少時に男の子に対してときめきを抱いたりするという体験もありませんでした。なぜなら私は男性的特徴を備えた他者の見た目が気持ち悪いと感じているからです。自分を含め、男性全ての存在を『醜いものである』と認識しています。いました。
私の根本にある願望は、自分が社会的に女性として見られたいという欲求ではなく、自分自身にとって醜い『男性の姿』を放棄することでした。
ですから、テレビなんかでカリカチュアされたオカマが出てくる番組で「うわ、ホモ気持ち悪い」だとか「わー食われるー」とか馬鹿な芸人どもが騒ぎ散らしているコントを観ても、「まあそりゃそうだよな」としか思いませんでした。が、貴様らのように醜い精神と醜い肉体を持つ人間になぜオカマを囃し立てる資格があるというのか。そういう発言は貴様らが死んで新たに綺麗な肉体を所持してからにしてくれ。と、いう感想を、実は思ったりはしました。
で、なんの話をしてたんでしたっけ?
あ、そうそう。
当時のゲイとオカマのイメージに対する違和感の話をしていたのです。
当時のネット上で語られていたオカマのイメージというのは、一つか二つの見方しかありませんでした。
一つは男の姿のままで男が男を好きになる。
もう一つは女装癖の男が男を好きになる。
私はどちらも当てはまらなかったのです。
今ではLGBTという概念が出てきたので、そういうタイプの性的少数者だけではないということが理解されつつあるようです。
けれど、本当の意味でそれが各々の立場において理解されることはないだろうと思ってます。
なぜなら、これらは生理的な嫌悪感から発生する感情だからです。
男である私が男性を醜いと感じているのもまた生理的な現象であり、世の中の男性が「ホモきっしょ」と口に出す根本的な感情と同じです。
これは仕方がないことです。
しかし、不思議だったのは、《男のみんなはどうして自分の醜い姿を気持ち悪いと思わずに平気で生きていられるのだろう?》ということでした。
当時の私は自分の姿が「キモい姿」であることに耐えられませんでした。消えてなくなりたいと思いました。でも、やっぱり死ぬのは怖くて別の方法を探しました。
その別の方法というのが女性ホルモン剤でした。
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