ヒロインではなく勇者に転生してしまいました。

とりてん@ちゅん

第1話「いつもの日常」

「お...ちゃん.....おね...ちゃ....」

 ここは....

 どこだ........?

 .....ああ、なんだ家か

 何故だろう

 久しぶりに、帰ったような感覚がする

 おかしいな

 ぼんやりとそんな事を考えていると

「お姉ちゃんっ」

 ばちんっと頬を叩かれた

「──いっ!?」

 叩かれた部分がヒリヒリとした痛みを伴い、腫れ上がってくる


「ちょっと、お姉ちゃん?聞いてるの?!」

 自然と溜まってきた涙で潤む目を瞬かせ、頬を抑えながら頷く


「.....まったく...お姉ちゃんって本当に人の話聞かないんだから...」


 この目の前に立っている少々暴力的な少女は我が 妹、陽山理緒よしやまりおである


「ねぇ、お姉ちゃん聞いてる?早くしないと遅刻するからね?」


 パッチリとした二重の丸い瞳に薄い桜色の唇、鼻筋はすっと通っていて、ストレートの亜麻色の髪を腰まで伸ばし、大人のような雰囲気で───しかしまだ子供のあどけなさを残したような、愛らしい容姿

 .....ようするに美少女ってことだ

 悪くいえば世間受けの良い外面だけのロリっ娘なのだが、それを言えば恐ろしい結末が待っているので未だに言えない

「.....お姉ちゃん、まだくだらないこと考えてるでしょ」

 何故分かる我が妹よ

「顔でだよ.....ほんとにもう...とにかく、 玲央ちゃんが玄関前で待ってるから早くした方がいいよ」

 呆れた顔をする理緒に曖昧な返答をし、私はそのままノロノロと着替え、食卓には着かずに玄関へ直行する

 そのまま扉を開けると


「凛!?早くしないと遅刻しちゃうよ!?」


 今にもブチ切れそうな幼馴染がいました


「あー、ごめん、なんかよく寝れなくてさ」

 おっとこの発言は失敗だったようですね


【こうかはばつぐんだ!

 ➡れいなのLv2だったいかりが➡Lv6になったようだ】


「もういいから!!早く!!」


 これは.....!?

 本気のミラクルパンチか!?

 避けようと首を竦めた瞬間、手がびよーんと伸びてきて────

 そのまま私の襟首を引っ掴むと全速力で飛び出していきました


 キーンコーンカーンコーン....

 .....キーンコーンカーンコーーン

 昼のチャイムが鳴り響く中


「おーそのおかず美味しそー」

 お昼のお決まりの頂戴アピール


「...何言ってんの、自分のがあるでしょ」


 厳しい声でそう言いつつも、そっと私の弁当箱に取り分けてくれる優しい怜奈ちゃん


「どこまで優しいんだい、怜奈ちゃん、私が男だったら惚れちまうぜ」

「きゅ、急に何言ってんの....本当に次はないんだからね?」

 照れてる、照れてる

 しばらくの間、無言で食べていると

 厳しかった目が、だんだんゆるんで柔らかくなっていくのが分かる

 この幼馴染───

 神田怜奈かんだれいなは私の幼稚園の頃からの親友だ

 明るい茶色の、ちょっとツリ目の二重の瞳、同じく茶色い肩までのストレートの髪を下向きのツインテールにしている

 色白で、全体的にほっそりとしていて、胸も....ぺった....まあここは言わなくても良いだろう

 先程の発言と、この外見から、もう皆さんもお察しだと思うが....

 この幼馴染は典型的な王道ツンデレだ

 ────と、突然怜奈の声がして、一気に現実に引き戻された

「あのね、凛」

「なんだい、怜奈ちゃん?」

「その言い方やめてよ!.....他の子の前では」

 あれっ?

 では?

「なにニヤニヤしてんの!?」

「なんでもありませんよー」

「なんでもあるでしょ....あのね、真面目な話だからちゃんと聞いて」

「ふぇい」

「.....」

 ふざけました、すいません、そんな目で見ないでください

「はい」

「.....最近、凛って寝坊多くなったでしょ?」

 .....そう言われれば確かに

「ここ1週間はずっと遅刻してるでしょ」

 確かにそうですね

「うん、まあ、.....えっ?」

「何?」

「.....もしかして、かなり本気で心配してくれてる?」

 驚いてこっちを見る顔が、どんどん赤く染まっていく

「あ.....ぁ.....ばっ!?バカじゃないの!?わ、私が本気で心配するわけ無いんだからね?!」

 おや、本当にどこまでも王道ツンデレですなあ

 .....まあ、二人とも女なんだけども

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