星野久遠の手記 1
■月□日 晴れ
ついに訪れたこの日、隕石は衝突寸前に消滅して世界は滅ばなかった。
今思えば、ヤケを起こしたりしなくて本当によかったと思う。
今頃は警察や消防は大忙しなんじゃないかな?
人の多い所では犯罪が多発していて、最後まで職務を全うしようとした警官も居たみたいだけど手が足りないとか聞いたし。
自らの手で命を断った人も多いというけど、ちょっと理解ができないな。わざわざ覚悟決めて死ななくても隕石が落ちれば一瞬で終わるのに。
うちの近所はほとんどの人がシェルターを目指したらしくて、町中には誰もいなかった。交通機関が駄目になってるんだろうね。
前置きはこの辺にして……どうやら、隕石による危機が去ったかとおもったら、今度は奇妙な現象が起こっているようだ。
動物の一部が、人間の姿に変化してしまったんだ。
あまりに非現実的な話だと思うけど、なにせ抱っこしてたクーが突然女の子の姿に変化したんだからしょうがない。
この奇妙な現象について分かったことを自分なりに纏めておこうと思う。
【この現象は隕石が原因である】
これは間違いない。隕石が消滅する際に放った虹色の光に目が眩んで、次に目を開けた時にはもう変身してたから。
【擬人化動物はみんな女性の姿になる?】
雄猫のクー、ダンシャク、まゆげ、雄犬のシーザーなど元の性別が雄であることを確認できる子らも含めて全員が女性になっている。
ただし共通事項として全員が去勢/避妊済みのため、それが影響している可能性は否定できない。
外見年齢は
ダンシャク>シーザー>まゆげ≧ハナコ>クー
に見えるが、実年齢としてはたしか
ダンシャク13、シーザー16、まゆげ7、ハナコ4、クー4
だった筈なので、野生個体と飼育個体で変化後の外見年齢に差が出ている可能性がある
【変化した動物は言葉を理解し、会話ができる】
日常会話をこなす程度の語彙力、知識は備えている様子。
どの程度の知識があるかは不明だけど、少なくとも実際に見聞きしていた範囲の事はわかるようだ。
動物時代の記憶もちゃんとあるらしい。
【すべての動物が変化する訳ではない】
カラスや地域猫たちなど、変化した者とそうでないものが混在している様子で、数が分かる地域猫たちから推測するに変化率は二割ほど?
変化する、しないの条件は不明。
【変化した動物は、元の外見を反映した服装をしている】
獣耳と尻尾を備えており、服装は種族ごとに統一される。
クーや地域猫たち「猫」を例に上げると、ノースリーブのトップスとスカート、アームカバー、ニーソックス、あと裏に肉球のデザイン(柔らかい)のある靴を共通して着用。
これらの色合いは元の模様を反映したものになる。
クーの尻尾やダンシャクの顔など、分かりやすい特徴があれば元になった動物について判別が可能。
服は毛皮に相当するらしく、クーたちは毛づくろいで服を舐めて綺麗にできるのと、カラスの服は水を弾くのを確認。
服は脱ぐ事もできるようだが、着用していない間は上記の特性を失うらしくカラスのチビ助が脱ごうとした瞬間特性を失ってずぶ濡れになった。
服じゃなくて、本体の能力? 乾いたあと着せ直せば特性が復活するのかは要検証。さらに尻尾や排泄物が服を貫通するのも確認。
ちょっと魔法じみた要素が多すぎて理解が追いつかない。
あと、獣耳の他に人間の耳もちゃんとある。確認したらどちらも機能していたので多分、可聴域が違う?
【変化した動物の能力】
ちょっと現実離れしてるレベル。女子中学生くらいの体格をしたクーの細腕で10kgの米袋2つを片手で苦もなくつまみ上げた。しがみつかれた時も引き剥がせなかったし、明らかに僕より圧倒的に力がある。
爪も超凄い、木製の柱がバターみたいにスパッとえぐれた。爪とぎの犯人であるクーは注意しておいたが、ちょっと怖い。
あと、擬人化した鳥は飛べるようだ。髪の一部が翼の役割をしていて、隕石の光に似たキラキラを撒き散らしながら飛ぶ。
大きさ的に翼は飾りで、恐らく隕石由来の不思議な力で飛んでいると思われる。不思議すぎる。目の保養になる。
【変化した動物のコミニュケーション能力】
人間とは問題なく意思疎通が可能。会話が可能なためか、アライグマやカラスのような警戒心の強い種でも友好的に接することができた。
変化した動物は元動物から見て「同族の匂いがする人間」であるらしく(まゆげ情報)、元動物と接しても「仕草を見てある程度察する」程度の事しか分からない(ハナコ情報)
人馴れしない、警戒心の強い動物の場合たとえ親子でも通じ合うことは困難な様子(例:アライグマ)
……これ、群れをなす動物に大惨事が起きているのでは?
今のところ、わかってるのはこのくらいかな?
非常に濃密な一日だったし、なんかめちゃくちゃ疲れた。
クーはまだ起きてるみたいだけど、先に寝よう。
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