3
左右に、人をかたどったようないびつな柱がある広い通路を、博斗とシータは走った。
博斗はシータの手を引き、シータは、博斗のいったいどこにこんな力が残っているのかと驚嘆しながら、引かれるままに走り、方向を指示した。
震動の間隔が、少しずつ短くなっている。
博斗達は走り、何度も角を曲がった。
少しずつマヌの広間より低いところに向かっていることがおぼろげだがわかった。
そして、博斗の背より高く、両手を広げても届かない、巨大な金属扉の前で立ち止まった。
「扉を、開けるぞ」
シータは壁面に取りつけられた装置をいじった。
空気が抜けるしゅーしゅーという音がして、ゆっくりと、金属扉が左右に開いていった。
博斗は、息を呑んだ。
「これが、動力室?」
あまりに無機的な空間だった。
正面に大きな卵状の球体があり、そこからパイプが上方に伸び、天井の向こうに消えている。
球体の表面には、入り口にあったものと同じような薄っぺらい装置が取り付けられていて、博斗は、その表面に、パンドラキーがしっかりと埋めまれていることを確認した。
「よし、あれを剥がしてやる」
進み出ようとした博斗を、シータが止めた。
「待て。無理だ。正しい手続きで外さないと、暴走するだけだ。私の言う通りにしてくれ、博斗」
どーん。
どーん。
間隔がいよいよ狭まってきた。
シータは部屋に入ると、横の壁に向かった。
壁には、これも卵型の、ちょうど人ひとりが入るぐらいのものが取りつけられている。
棺桶みたいだと博斗は思った。
近づいて触わってみると、石でもなく金属でもないおかしな手触りがした。
シータはその間に、壁の前に立った。
「ここから、動力炉の自爆操作をする」
博斗が続けて入り口をくぐろうとすると、シータは、素早く壁面に操作をした。
すると、耳慣れた、笛のようなきーんという高周波の音がして、博斗とシータの間に光のカーテンが降ろされた。
博斗はカーテンに手を触れた。
堅い。
まるで壁だ。
いや、その通りなのか? これは、障壁なのか?
「お、おい、なんの真似だ、シータ?」
シータは、壁の向こう側の、卵状のものを指差した。
「そこに、脱出用のカプセルがある。ミョルニールの爆発にさえ耐える完全なものだ。使い方は簡単だ。乗ってドアを閉めるだけでいい」
「おい、お前はどうするんだっ?」
シータは寂しげに笑った。
「そのカプセルは一人乗りだ」
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