どすっ。


鈍い音がした。


ピラコチャが地面に倒れたのだと思った。


どすっ。


同じ音がもう一度した。


どすっ。


もう一度。


(一度倒れた人間が何度もどすどすと同じ音を立てるなんてことがある?)


遥は、振り向いた。

いつの間にか赤い光は完全に消滅し、自分が制服姿に戻っていることに気付いた。


胸にぽっかりと穴の空いたピラコチャが、にたにたと笑いながら、腕を使ってやってきている。


胸の穴の向こうに、なにかを言っている桜と由布が見えた。

遠くて声があまり聞こえないが、逃げろとか危ないとかそういうことを言っているんだろうということは地球が丸いということと同じぐらい確信をもてた。


でも、動けない。

身体が重い。


ピラコチャが、手の届くところまでやってきた。


死ぬんだ。

あたし達。

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