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「げは、ゲハ、ゲハハ、ゲェェェェハハハハハハハハハハハハハハハハ!」
ピラコチャが笑い始めた。
大きく空いた口から血が吹きこぼれて歯が抜けてぽろっと落下した。
次に、大きく開いたその顎から、下顎がずぼりと抜けて落下した。
皮膚と肉が糸をひいていて、遥に納豆を連想させた。
ようやくピラコチャの顔面に笑いとは違う表情が生まれた。
だが、下顎がすでになくなっているいま、動く筋肉はごくわずかで、目玉の周辺が「どうなっているんだ?」と自らに問いかけているようであった。
みるみる身体と画面の表面の皮膚の色が変貌し黒ずんでいきどろどろと溶け落ちていく。
「オォァァアなんてこった俺はまだアァァァァァ…!」
ずぶずぶ湯気をあげながらピラコチャの身体の組織だったものが地面に溶け落ちていく。
次第に腐臭が鼻につき始めた。
ついに遥は気力の限界を感じて、その場に倒れこみ嘔吐を始めた。
驚愕に見開かれた目玉が眼窩からせりだして地面に転がっていった。
筋肉が崩壊し、すべて崩れ落ちていく。
わずかな肉の破片を残した黄ばんだ頑強そうな骨格もまた、燃え尽きた灰さながらに、瞬く間に風化して崩れ去っていった。
こうして、笑い声をあげてから数分も経たぬうちに、ピラコチャの存在はこの世から消滅してしまった。
ただその名残は、若干の黒ずんだ灰と、黒っぽいどろどろとした血の塊と、空気に残っている強烈な腐臭だけであった。
遥の肩に、誰かの手が置かれた。
胃の中のものを全部吐き出し終えてから、遥はようやく顔を上げた。
「終わったんだよ、遥」
「桜…でも、どうして?」
「ピラコチャは、肉体の限界をあまりに超え過ぎたんだ。普通に行動していれば、もう少し長生き出来たんだろうけどね。僕たちの攻撃は、無駄ではなかったってことさ」
「…そう」
「腕章、壊れてしまいましたね」
由布がつぶやいた。
「いいのよ、もう役目は終わったんだし。あとは、あたし達に出来る事は、博斗先生を信じるだけ。とにかくあたしはもう、限界。…少し、休ませて」
遥はそう言うと、地面に仰向けに転がった。
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