10
卒業式の時間になった。
博斗は、教員室の自分の机に向かっていた。
誰かがドアを勢いよく開けて教員室に入ってきた。
快治が、血相を変えた顔で立っている。
「せ、瀬谷君。なにをしている! 早く来るんだ!」
快治は博斗の腕をつかむと、強引に教員室から引きずり出した。
「理事長待ってくださいよ! 卒業式には出なくていいって言ったじゃ…」
「違う! 卒業式などではない。君が必要なんだよ! 来ればわかる!」
博斗は、理事長に連れられるままに校舎から出され、正門の前までやってきた。
博斗は思わず息を呑んだ。
正門の外に、招かれざる来訪者がいた。
ホルスだ。
ひかりは、開かれた正門のレールを挟むようにして、ホルスと向かい合っている。
「な、なんのつもりだ、ひかりさん…」
「瀬谷君。君が知っているかどうかはわからないが、ホルスと酒々井君は…」
「知ってますよ。兄妹でしょ!」
博斗は乱暴に言い返し、尻ポケットに手を突っこんだ。
「酒々井君は、ホルスと刺し違える覚悟かもしれん。瀬谷君、酒々井君を守れるな?」
「おう。ひかりさんを死なせるわけにはいかない!」
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