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「どういうことだ!」
ピラコチャがまず部屋に飛びこんできた。
マヌに戦況を説明しようと難儀していたホルスは、この中断にほっと息をついた。
「なんです、ピラコチャ、騒々しい!」
「どういうことだ、ホルス! 奴らが平然と宮殿の前までやってきた。シールドが効いてないじゃねえか!」
「…イシスの塔が破壊されたので、出力が低下していたんですよ、おそらく。困ったものです」
「平気な顔して言うじゃねえか、ホルス! 元はといえばてめえの妹が塔を破壊されたから…」
「やめておけ、ピラコチャ」
乾いた足音を立てながら、シータが部屋に入ってきた。
シータのすぐ後ろからイシスも続いて入ってきた。
「ホルスもだ。見苦しいぞ。原因などどうでもいい。いま起きていることを考えろ。このままでは宮殿はあの五人に占領されてもおかしくない」
「…ちっ」
ピラコチャは唸ると、その場に尻をついて座りこんでしまった。
シータのことはあまり好いていないピラコチャだが、その戦略眼と状況判断の的確さには一目置いていた。
そのシータが、前線に立つことをあきらめたということは、たかだか五人の人間に、この宮殿が追いつめられているということだ。
「総帥のお考えは…」
マヌは、かっと目を見開いた。
「なんたる失態、なんたる苦戦。…このような屈辱を受けるとは」
マヌは筋張った手で頭をかきむしった。
心の拠り所でもあったマヌの狼狽ぶりを見て、ピラコチャとホルスは浮き足立った。
シータは無言だった。
イシスは。
イシスは、他にときはないと確信した。
マヌがこのような混乱状態に陥ることなど金輪際ない。
いまが千載一遇、唯一のときだ。
イシスは、マヌのすぐ足元まで進むと、ひざまづき、頭を深く下げた。
「私の塔が破壊されたためにこのような事態が招かれたことは火を見るよりも明らか。なんと申し上げればよいか…」
「よい。お前が果たしてきた役割は充分に大きい。私は一度の失敗ごときではとやかくはいわぬ」
「なんというおそれ多いお許しの言葉」
イシスは、手応えを感じ取った。
心の動きを悟られないように、つとめて平静を装い、マヌへの忠誠を前面に押し出し、声音が変わらないように気を付けながら、おそるおそるという口調で切り出した。
「総帥。たいへん恐れながら、申し上げます。私に、この窮地を脱する一つの策があるのです」
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