16

「揃いも揃って無様だぞ」

新しい声がした。


ピラコチャとホルスが、硬直して頭上を見上げた。

もはや博斗達のことなど眼中にないようであった。


博斗の背に震えが伝わってきた。

ひかりが震えている。


博斗もまた、頭上からやってくる異質な気配に戦慄した。

こいつはまさか…。


空に、灰色の人影が浮いていた。

「ひけい!」


その一声に、ピラコチャとホルスはおたおたと博斗達から離れていった。


ゆっくりと影が下りてきた。

影に見えていたのは僧衣だとわかった。

フードを被っているので人相までははっきりとはわからない。

ただ、しわがれた口元が見えた。


「お前…マヌ総帥か!」

博斗は歯を噛み締めた。


なんだというのだろう、マヌから漂うこの雰囲気は。

見ているだけで気力が吸い取られていくようだ。


「貴様、オシリスか! それに、イシス! そうか、そういうことか。私も愚かだったものよのう。では、貴様達をまず殺してくれるわ」


マヌが手を突き出すと、二メートル近くある長柄の矛がその手に現われた。

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