14


レッド達は、あと一息のところまでイヤホンムーを追いつめながら、ブルーが消えた穴を埋めることが出来ず、いまは逆襲を食らっていた。


そこに戦線復帰したブルーの飛び蹴りが、イヤホンムーを横から吹き飛ばした。


「ブルー! どこ行ってたのよ、もう」

レッドはブルーの頭を小突いた。


イエロー達もすっくと立ちあがった。


疲れも痛みも麻痺したようだった。

いまがチャンスだと誰もが心得ていた。


「スクールスティックよ!」


四人はめいめいのスティックを手に空に飛んだ。

レッドは燃える熱球を手に呼び出し、自分も飛びあがる。


イヤホンムーが立ち上がり、敵の姿を探した。

地面にいない。

イヤホンムーは空中を見上げた。

「おおお…!」


五人は空中を縦横に駆け巡った。

赤いボールもあっちへこっちへとめまぐるしく動く。

五人の移動は次第に範囲を広げていき、つられてイヤホンムーの顔もあちこちを向いた。


レッドのスティックが、宙を舞うボールを上から捕らえ、加速して放り出した。

「アターーーーーーック!」


イヤホンムーは両手をかざして防ごうとしたが、無駄だった。

赤い炎の直撃を受け、イヤホンムーは背後の車を巻きこんで爆発し、砕け散った。


五人は地面に舞い下りると、へなへなと崩れた。

体を覆っていたコスチュームも、静かに消えて腕章に戻ってしまった。


もたせていた気力が、スクールスティックのためにすべて放出されてしまった。

体は負傷と疲労でまるで動かない。

地面に座りこむ他にはなかった。


「他の戦いはどうなったの…?」

遥は、物音のするほうに顔を向けた。

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