11

「出来た」

桜は眼精疲労でしょぼしょぼの目をこすりながら、隣室の床で毛布に包まって雑魚寝している四人を起こした。


四人は、翠でさえ不平一つ言わずにすぐ起き上がると、桜に続いた。


テーブルに、花びらのように円を描いて腕章が並べられていた。


「これなら、結界があろうがなんだろうが、絶対にクロスムーを上回る力を出すことが出来る。ただ、いい? これは、とにかく間に合わせなんだ。僕たちの心の動きをコアを介して増幅させた上でコスチュームに流し込む回路を取りつけただけ。さっきの戦いで壊れたところの修理もしていない。増幅された力が溢れたときのことも考慮していない。燕、わかる?」


「…とってもあぶないってことでしょ?」


「そういうこと。長時間の戦いは出来ない。せいぜい三分でクロスムーを倒し、博斗せんせを救出する。変身も改良できていない。またさっきみたいにクロスムーに変身を破られたら、戦う前に全部おしまい」


「変身なんか、そのときになってから考えればよいのですわ」


「勝てると思う?」

桜は答えを確信していたが、あえて挑戦的に四人に聞いた。


「勝てるかどうか、じゃないわ。勝たなきゃならないのよ!」

五つの腕章を、それぞれが手にとった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る