「なにしてんの?」

翠に肩を貸している遥の前に、きょとんとした顔の燕が現れた。


「ちょうどよかった、ねえ、肩代わってよ」


「うん、いいよ」

燕が快諾したので、翠は遥から燕に支えを乗り換えた。


「いやー、翠って重いから肩こるわ」

「まあ、わたくし、遥さんとは違って体の前に肉がたくさんついていますから、ほほほ」

「お腹に?」

「ち・が・い・ま・す・わ!」


三人は、階段を降りた。

遥は、燕にも聞いてみることにした。

「ねえ、燕?」

「なあに?」

「今日、なにか感じる?」

「なにかって?」


「稲穂は何つったっけ…空気の流れがなんとかかんとか」

燕は首を傾げた。

「なんにもないよ。あ、でもね…けさはいっつもより寒かったよ。手が冷たかったの」


「そりゃたいへんだったわねえ。あーあ、燕に聞くんじゃなかった」

「でも、確かに今日は寒いですわ」

「まあ、そうね。そんなに風があるわけでもないのに、なんとなく底冷えがする感じ。…こう寒いと気分も滅入ってきちゃうわよね」


三人は、身を寄せるようにして階段を降りていった。

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