博斗とひかりが、再び石の橋にさしかかると、腹の底に響くような重い震動がし、耳障りな音が心を乱した。


博斗は苦痛に顔を歪め、ひかりは一瞬立ち止まった。

「まさか…一人、倒した?」

ひかりがつぶやいた。信じられないという口ぶりだ。


「倒したって? じゃあ、あと三人ってことですか?」

「ええ、しかし…」


博斗はひかりに尋ねた。

「なにか、気になることがあるんですか?」


「すでに神官が動き始めているとは、私が思っていたよりもずっと早いのです。ホルスが、明らかに計画を早めたとしか思えません」

「でも、いいじゃないですか。一人倒れたんだったら」


「しかし、なぜホルスが急いでいるのかがわかりません。こんなに早くては、神官は満足に戦えない状態で復活しているのではないでしょうか?」


「じゃあ、なおさら急いで行きましょうよ。チャンスってことじゃないか」

博斗はひかりをせかした。


「ですが…」

ひかりは煮えきらない。


「ひかりさん。うじうじ考えてるだけで行動しないのはいちばんまずいですよ。とにかく、神官を倒すことをいまは考えましょう」

博斗は、ひかりをうながした。


「わかりました。ホルスが行動を急いでいる以上、私たちも行動を急ぐ必要があります。あまり使いたくはありませんでしたが、裏通路を使うことにしましょう」

「裏?」


「ええ。神殿の裏手に隠し通路があります。いまスクールファイブが進んでいる方向と反対側から神殿に入ることが出来る近道です。神官の居場所まで比較的早く進むことが出来るでしょう。ただし…」

「ただし?」


「…なにを見ても、驚かないでください」


「そんなやばいことでもあるんですか?」

「いいえ」

ひかりは、微妙な笑みを浮かべた。

「危険はなにもありませんよ」

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